k-takahashi's blog

個人雑記用

ストリートビューを規制するか

 色々と物議を醸しているGoogleStreetView。「全面的に禁止するのも変だけれど、日本で実行するならもう少し制限をかけた方が」という論がある。事前に連絡しておけとか、許可を取ったところだけ撮影しろとか、個人宅は写すなとか。
 それなりに妥当な主張であるとは思うが、でも、私はGoogleはそういう方向にはいかないのではないかと思っている。


 私はよく写真を撮る方だと思う。出張や外出した時を中心だが、デジカメのカウンターを見る限りでは、年に1000枚以上撮っている。風景を撮ったものも多く、人もたくさん写っている。その中の一定数はブログやフォトライフに載せているので誰でも見ることができるようになっている。一部を除いて、わざわざぼかしを入れたりする処理はしていない。
 とはいえ、そこには位置情報も個人を特定するためのタグもないのだから、ストリートビューとは違うという意見はあるだろう。ただ、それは「今はまだ入っていない」ということにすぎない。 家の前の道の写真を撮る人がいるのか、ということについては、他のものと同時に周囲が写ってしまうことがあり、数千万、数億の人達が撮る写真をかき集めればそうとうな部分はカバーできてしまうと考えられる。(世界の携帯電話の約4割はカメラ付きである)
 Googleの野望の一つは、世界の情報を整理し尽くすことだ。それは見果てぬ夢かもしれないが、その方向への努力は惜しまない。だとすれば、特定の場所を撮った写真が、もしウェブのどこかにあるとしたら、Google的にはそれは探し出せなくてはならない。GPS情報のついた写真も増えてきたし、ブログなら写真に関係した記述文もついている。一つのエントリーからは無理でも、複数のエントリーの情報を組み合わせたらどうだろう。100%の精度は無理としても、95%なら充分可能だろうし、99%もありえる。

 もちろん、それはまだできていない。でもそれは、「できるか/できないか」ではなく「いつできるようになるか」という問題でしかない。


 さて、Googleがそういった機能を実現したとする。それを地図情報とマッシュアップすれば、特定の街を道沿いに見て歩くことも可能になる。Google撮影隊無しのStreetViewの完成だ。


 当然、今と同じ議論が起こるだろう。そしてそのときは今回とは違って、攻撃の矛先が撮影者に向けられる可能性が高い。Googleと戦うよりは個人を攻撃する方が効果が見込める。弱いところを攻めるのは常道だから。そして、個人に対して「個人宅が写る写真を撮ってはならない。撮影は許可された場所だけで行い、写る範囲には全て連絡しておけ」という要求が出される。それに反発する人も多いだろうが、様々な理由でその要求に応じる人も多いだろう。そして、ネット統制派は要求に応じた人の存在を梃子にして攻勢を強めていくだろう。
 Googleが懸念しているのはそういう事態なのだと思う。


 整理すれば、

  • Googleが求めているもの:原則事由、制限は例外
  • 統制派が求めているもの:原則禁止、許可部は例外

なのだろう。いつものGoogleの主張とも合致する。


 Googleが削除要求にほぼ自動的に応じているのも、この文脈で考えれば自然な対応と言える。何を残すべきかという判断以前に、上述の原則確立を目指しているからだ。


 Googleの野望の先には当然のようにStreetView的なものが存在する。しかし、それはまだしばらく未来の話のはずだった。そんな未来の一部を、金の力を借りて無理矢理現在に出現させたサービスがStreetViewなのだと思う。だから、「先走った」ものなのも当然、軋轢が発生するのも当然。


 私はStreetView賛成派。その理由は、単純に面白くて便利だということの他に、統制派よりもGoogle的ビジョンの方に賛同するから。もちろん、それは私の勝手な想像で、本当のところは分かりませんけどね。


止められるのか?

 止められる可能性はあります。
 不安を煽って規制してしまうという手が一番。この手で、うまく規制に持ち込んだのがGMO、不安を煽ることには成功したが規制には持ち込めなかったのが住基カード、一旦不安を煽るのには成功したものの、実績を作られてしまったのが屋外監視カメラでしょうか。
 実際、GMOを制限する様々な規制は、不安だから、問題が起きる可能性があるからという理由で維持されているものがほとんどで、具体的な被害に対処するものは少ない。この例にならえば、StreetViewも「不安だから」「問題が起きる可能性があるから」という理由で一旦規制を設けてさえしまえば、「不安を解消するにたる充分な根拠がない」と言い続けるだけで延々と規制することが可能になるでしょう。 だから、規制したい人は、とにかく人々の不安を煽って早急に規制を実現させてしまうのがよい。のんびりしていると実績ができてしまいます。そうして、コストベネフィット論とか、自由の位置づけとのバランス論とかになってしまうと、不利ですよ、多分。


困っている人かも

 意外とGoogle叩きをしたがっている人も多いんだな、という感想も持ったのだが、それはそれとして、日本にも

今後、検索の領域はテキストだけでなく、映像やセンサー情報、リアルタイムで起きていることの情報などに広がっていくと考えています(図)。ここの検索はある意味で、まだ始まっていない戦いです。

国産検索エンジンはなぜ必要なのか?--経産省担当者に聞く - (page 2) - CNET Japan

なことをやっている人達がいる。今年が2年目だから実証実験とか計画しているはずなんだけど、どうするのか楽しみ。技術がどうこうという話ではなく、成果を世に問えるのか、何をどう問うのか、というところが。
Googleは良くも悪くも理想と傲慢さを備えて走っているけれど、彼等の方は、うまいことやるのか、ぽしゃるのか、どうなるかな。