- 出版社/メーカー: ジャパンミリタリーレビュー
- 発売日: 2008/12/10
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まず、10月8日にバックファイアーとフランカーが日本海を伺ったことを、ロシア軍活発化の現れとして紹介。また、これがきちんと報道されなかったことに苦言を呈している。
一方で、武器どころか国防費そのもののが不正流用されている問題もあり、しかもそれがかなり深刻なレベルであることが示されている。
田母神問題については、こんなことが書かれていた。
自衛隊幹部が政府見解と異なる意見を表明したことが悪いのであって、言いたいことがあるなら辞めてから言うべきだという論調が横行しているが、全く持って的外れな批判というよりほかない。この欄では何度も繰り返し述べているように、高級将校は高度に知的職業なのであって、戦時には軍功によって、平時には行政手腕のみならず知的作品によって評価されるべきものである。マハン提督が「海上権力史論」を、グデーリアン将軍が「アハトゥング・パンツァー」を公刊したのも現役将校時代である。もちろん、機密漏洩は御法度だが、高級将校の言論を封ずることは軍隊の知的自滅に等しい。(p.147)
ここだけ読むと田母神擁護論のようだが、実は続きがある。
では何が問題の本質なのか? 第一に「懸賞論文」だということである。懸賞論文への投稿などは、これから名を上げようとする若輩研究者か、暇人のすることである。位人臣を極めた大将のすることではない。
(中略)
第二にテーマや主催者の筋が悪すぎるという点である。そもそも評判の芳しくないアパホテル主催という検証で、しかも第一回と言うことは全く何の権威もないということを意味する。あまりに無用心である。
(中略)
最後に内容。これまで日本を覆っていた自虐的・自閉的なサヨク論調に一矢報いたいという気持ちは分からないでもないが、紙数に比べて言いたいことがテンコ盛りで何が主題か分からない。(p.147)
ときて、「おまえ、それ何か変だろ」という指摘になる。そして最後には、
日本の空軍力にとって、戦略・戦術・装備等々でどのような問題点があるのか? 来るべき将来の空軍は如何にあるべきなのか?といったテーマなら、弊誌はいつでも論文を掲載する用意があるので堂々たる大論を寄せてもらいたい。(p.147)
と、ほとんど挑発に近いような内容。実際、日本の将来空軍力という問題も、本質から外れた議論が横行しているわけで、専門家ならこちらをきちんとやってほしいというのはある。決して無能な人ではないとのことなので、是非、こちらで筆を奮って頂きたい。
黒井文太郎氏の「認知心理学で考えるインテリジェンス」も面白い記事。幾つか抜き書きしておく。
- 間違った仮説に整合するインフォメーションも、探せば必ず見つかる
- インテリジェンスとは、利益を得る目的で、判断・行動するための知識
- リンチピンは、絶対的であるべきものなのだが、現実にはその前提があやふやなことが少なくない
- 人間は判断に際して、ものごとには必ず因果関係があると思い込んでしまう
- 人間は無意識のうちにとりあえずの結論を出してしまい、その後にそれを修正する
- とりあえずの結論がアンカーのようになってしまい、充分に修正できない
- 過去に起こった出来事をふるかえるときに、あれは自分がきちんと予測していたと無意識のうちに思い込んでしまう
- ミラーイメージングという、自分の価値観や合理性で相手を見てしまう陥穽がある
チェックリストとして。これは軍事・政治だけでなくビジネスにも使える話である。