k-takahashi's blog

個人雑記用

連鎖する危機

世界経済 連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む

世界経済 連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む

 飛行機の待ち時間につらつら読んだ本。3名のエコノミストの対談を書き起こして一冊の本にまとめたもの。色々なことを書いてあり、あまりまとまりがあるとは言えないのだが、材料として。
(途中が一部乱丁で意味不明になっていた。急いで出したんだろうな。)


 幾つか面白かったところを

やや極論なのかもしれませんが、今次騒動を見ながらいま一つ考えることは、日本で銀行が不良債権処理を先送りしたことが、結果としては良かったのかもしれない、ということです。全行が不良債権を一気に処理していたら、バブルの規模が非常に大きかっただけに、担保不動産の競売が殺到して買い手がつかず、いずれの銀行も不良債権が回収できずに破綻したのではないか、とも考えられるからです。そうだとすると、銀行が不良債権処理を先送りし、大蔵省がこれを黙認していたことが、結果として悲劇を緩和したのかもしれせん。(pp.33-34)

 金融システムは、ある程度までの危機には対応して実体経済への影響を食い止めるが、ある一線を越えると一気に実体経済への悪影響が及ぶ、という性質を持っています。まるで、大雨が降ってもダムが悪影響を食い止めているので下流には被害が及ばないが、一定限度を超えてダムが決壊すると、一気に濁流が下流を破壊し尽くす、というイメージでしょう。
 今回、ダムを崩壊させたのは、リーマンの破綻でした。その意味では、リーマンは何があっても救わなければならなかったのですが、アメリカ政府は何故かリーマンを見殺しにしたのです。(p.80)

 安全保障チームが考えているステークホルダー論というのは、ローグステーツ(ならず者国家)の反対語であって、国際社会の秩序を乱さなければいい、間違っても俺たちの敵にはなるなよ、というものだそうです。一方で、経済の世界におけるステークホルダー論というのは、フリーライダーの反対語であって、ちゃんと大国としてのコストを払え、われわれのこの国際システムにただ乗りして、自分だけいい目を見ようというような重商主義政策はやめろ、ということのようです。比較してみると、経済の世界の方が中国の責任を重く考えていることになります。
 一方、中国内部では、政治、軍事、経済のの順に重きが置かれていて、経済の担当者の地位が低いのです。だから、「フリーライダーになってはいけない」というメッセージがあまり伝わっていない可能性があります。(pp.210-211)

 これはニュージーランドで聞いた話です。渇水が起きたので、地元の企業がニュージーランド政府に対して対策を要求したところ、政府からは、我々のつとめは二十年に一度起こるような規模の渇水を止めることです、という答えが返ってきたそうです。二十年に一度というのはなかなかうまい答えで、要するに一生の間に数回の危機ぐらい我慢しろということです。
 我々の感覚ですと、絶対に困らないようにしろ、と行政に対して要求してしまうわけですが、それをやると、二十年に一度にするのか、四十年に一度にするのか、それとも百年に一度にするのかで、かかるコストは急激に上がっていくわけです。そこを二十年に一度の渇水は止めて見せますから、それ以上は我慢してください、という答えは、なかなかリーズナブルだと思います。我々は、こうしたコスト・アンド・ベネフィットをもう少し真剣に考えた方がよいのではないでしょうか。(p.231)