Command Decision (Vatta's War)
- 作者: Elizabeth Moon
- 出版社/メーカー: Del Rey
- 発売日: 2008/01/29
- メディア: マスマーケット
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以下、一応翻訳が出ることを期待して大きなネタバレはしない方向で。
前作*1の後半で、カイ、ラフェ、ステラは別行動を取り始めたが、本作ではまずラフェの活躍。「何の連絡もないのが気になる」と言って家族の元に戻ったラフェは、家族を救出しISC(星間通信会社)のCEOに復帰。案の定ISC内に潜伏していた裏切り者を発見したが、、、
ステラはトビーをつれてカスカディアでヴァッタ運輸の経営の立て直しに着手する一方、モバイル・アンシブルの開発を続ける。
「宇宙一まずいフルーツケーキを作るおばさん」ことグレイシーおばさんも現場復帰。
主人公カイは、懸案だった武装船団作りになんとか成功し、2度の戦闘をくぐり抜ける。
そして、各人の努力が実を結んだか? いよいよか? というところで本作終了。
カイが作りあげた武装船団に名前を付けようとする会議のシーンで、船長達が嬉しそうに「ああだ、こうだ」と議論するシーンに笑いました。あげくにロゴをどうするとか言い出すし。最終的には "Space Defence Forces" の第3艦隊ということにまとまりました。(なぜ第3かって? そりゃ、はったりというもんです。)
どうやって、活動を維持するための資金を得るのかという問題は、時折そして何度も顔を出しカイを悩ませ続けます。
あと、終盤の戦闘シーンが少々面白い設定でした。(以下、ちょっとだけネタバレ)
カイのSDFがマッケンジー(傭兵会社)の船を助け、襲撃中の海賊を追い払います。ところがマッケンジーの船は損傷が酷くてすぐには動けない。
連絡を取ろうとアンシブル(超光速通信中継装置)を修理したところ、ISC(星間通信会社)から「勝手な改造をしているな、海賊め」と勘違いされてしまう。
その結果、星系内には動けないマッケンジーの船とSDFがおり、反撃を伺う海賊艦隊と、救援に来るはずのマッケンジーの艦隊と海賊退治に乗り出してきたISCの艦隊とがいつ来るか分からないという状況になってしまう。
厄介なのは、海賊艦隊の一部は正規艦を奪ったものでIDは正統なもの、カイのSDFの旗艦は拿捕船なのでID的には不正なもの(恒星間通信が完全に復帰していないため更新情報が届いていない)であること。ISCの艦隊は、海賊船を正規船、カイのSDFを海賊船と勘違いする可能性が高いのである。
ここに、通信の制限(アンシブルがなければ、星系内でも平気で数時間ラグがある)の問題も加わって非常にややこしい事態になっている。ここが戦闘シーンの見所。
とまあ、堪能させて頂いたわけですが、和訳でないのかなあ。
元々ミリタリーSFの色合いの濃いシリーズでしたが、本作では、有事対策を怠っていたため肝心の時に酷いことになってしまった連中が現れたり、少々時代錯誤的な義勇兵が肯定的に描かれたり、傭兵会社(マッケンジー社)が非常にしっかりした組織であることが語られたりしている。この辺が編集部に嫌われたのかねえ。*2
*1:
*2:ある人物がデタラメな報告に腹を立てて「たとえ平和主義者だって、補給とか戦術とか指揮系統とかぐらいは理解できるんだ」と怒りを爆発させるシーンが出てくる。日本に対する皮肉かと思いましたよ