k-takahashi's blog

個人雑記用

宇宙暮らしのススメ

宇宙暮らしのススメ

宇宙暮らしのススメ

宇宙全体だと気の遠くなるくらい大きいことに気づいてからは、まだ100年しかたっていない。外の世界を知らないのなら、小さな砂粒の上だけで生きていくのも仕方がない。でも、ずっとずっと広い世界があるのを知ってしまったら、そこに飛び出して行かなければ気が済まない。(p.8)

 野田司令の新刊。3章構成で、第一章は「宇宙は広大である」、第二章が「宇宙の常識・非常識」、第三章が「人類は宇宙へ飛びだそう」。で、とりあえず飛び出す先として、本書は「まず、小惑星なんかどうでしょう?」という提案になっている。難易度は高校生くらいを想定している印象。頑張れば中学生でも何とかなるかな。


 第一章、第二章は知識編。加速すると相対的に後ろに進み、減速すると相対的に前進する、という例の話題が丁寧に解説されている。具体的にどのくらい前に出るかも計算(中学〜高校生レベル)してくれているのが良い。他にも重量と質量の違いの解説も具体論中心でわかりやすい。
 でも、この辺は類書を読んでいればだいたい出てくる話。(わかりやすさという点では非常に良いです、本書は。)


 第三章が、行き先に小惑星を選ぶ理由とそこで活動する内容の紹介。
昔、JAXAの研究員の人が「月はミイラ、小惑星はピチピチの死体」という紹介をしているのを聞いたことがあるが、小惑星帯あたりまでいけば、炭素も水もたっぷり含んだ小惑星がほとんどだから、それを使えば良かろうという提案。
小惑星をくりぬいて居住区にしてしまえば、デブリ放射線も防げるし構造物建築も簡単。(昔懐かしのアステロイド・シップ。本作に登場するものは動かないけれど。)そこを小さな居住地にすれば良いだろうという話。
エネルギー的にも、最初に地球からやってくるときは相応のエネルギーが必要だが、小惑星間の移動なら、エネルギーはそれほど必要ない。野田指令の計算では、集光板で水を沸騰させて、それを吹き出せば充分だそうだ。(当然ながら、加減速は最初と最後のみ。あとは軌道修正に若干。)


 野田司令小惑星生活描写は、多少時代がかった感じがある。ゲームの設定に使うならこういうほうがあっている(小惑星の資源から銅を精錬するところから始める)けれど、実際には適当なキットを持ち込んで、立ち上げはさっさと済ませてしまうだろう。(開拓自体が目的ならともかく、開拓した後の活動が主目的なのだから。)


 そうそう、本書で書かれている設定はゲームの背景に使うと面白そうだし絵になる。ボイラーから蒸気を噴き出して飛ぶ宇宙船ですよ。惑星間移動は無理ですが、夏休みの宇宙ピクニックとかジュブナイルSFの題材にもぴったり。緊急物資を運ぶ運び屋とかの設定もできそう。
ある程度(数千〜)の小惑星移住が進んだところで、地球文明が謎の消失とかするのも面白そうだ。(エネルギー的に直接地球に行くことはできないので、謎として残しておける。) 
(注意:野田司令はこんなことは書いていない。私の勝手な妄想)