バベッジの夢であった差分機関(ディファレンスエンジン)こと蒸気コンピュータが19世紀に実現し、実用化した世界。バイロンがウェリントンを打破して産業ラディカル党党首として首相に就任する世界。エイダがエンジンの女王として文明推進のカリスマとなる世界。
20年近く前の作品のネタバレを気にしてもしょうがないので書いてしまうが、この物語全体がモーダスというプログラムによって自己言及を繰り返した蒸気コンピュータによって語られたという設定になっている。なので、「章」ではなく「iteration」(反復。最近はアジャイル開発の方法論も知られるようになったから、アイテレーションでいいかも)となっている。
差分機関が作り出した差分歴史世界。それが同じ時期の物語少しずつ変えていく(これがiteration)という方法で語られる。構成と描写が合わさった面白さ、ということなのだろう。
ただ、読み終わった瞬間、「いや、そうではなく、実は語り手が複数いたりしないか」「アイテレーションの中にアイテレーションが入ってないか」とちょっと疑った。さすがにこれは考えすぎだろうけど。
微妙にずらしながら書いていくのはブギーポップがやったし、この夏は反復アニメが話題になっていたことでもあるし、それっぽい表紙をつけてラノベレーベルで売ったら売れるかな? 無理かな、やはり。