k-takahashi's blog

個人雑記用

新聞・テレビが消滅することをゲーマーは前世紀に知っていた!?

佐々木俊尚氏の本*1を読んだ。内容は、メディアはコンテンツ、コンテナ、コンベヤの3層構造を持ち、力を持つのはコンテナを握ったもの。従来のマスコミはコンベヤを独占したうえで垂直統合を行い、たっぷりと利益を得ていたがコンベヤの独占が崩れたことでコンテナの支配権も失い、衰退の最中にある。これはマスコミの堕落といった一時的要因が原因ではなく構造的なものだ、ということを解説したもの。


 それはともかく、中にTRPGの話題が出てきていたので、ちょっと紹介。
 メディアは、パーソナルメディア、ミドルメディア、マスメディアの3つに分類される。受け手のニーズが高いのはミドルメディアだがそれは従来は流通が難しかったという指摘があり、昔のミドルメディア作成方法論として回覧的にコンテンツを増やしていくという方法があったと紹介する。その後に、こんな記述がある。

 同じようなものに、テーブルトークRPGの「プレイバイメール」というやり方もある。これは「自分の操っているキャラクターが次にどんな行動を採るか」を手紙で他のプレイヤー達とやりとりし、少しずつゲームを進めていく手法で、自分の採った行動の結果が分かるまでに一ヶ月以上かかるというのも珍しくなかった。
もちろんこうした手法は人数が少ないからこそ成り立つわけで、人数が増えてくると破綻してくる。数百人、数千人のプレイバイメールでRPGを遊ぶというのは、現実的ではない。(p.54)

 たしか、一番規模が大きかったPBMが「蓬莱学園」で、PC数は約1万人だったと記憶しているから、佐々木先生はこの辺は御存知ないようだ。


 一方で、蓬莱のときの遊演体がコンベヤ(印刷物の作成と郵送)の支配を元にした垂直統合によって市場を寡占(一応他に数社あった)し、コンテナ、コンテンツをコントロールしていたと見ると、その姿は本書で描かれている新聞・テレビの方法論そっくりだったりする。
 そして、その後、パソコン通信やウェブなどが普及してコンベヤが充実するにつれ、遊演体は市場支配力を失い市場規模も縮小、特定少数を対象に細々とした運営を中心とした今に至る、と見れば、これは本書が予言する数年後の新聞・テレビの姿に他ならない。


 まさにゲーマーは、前世紀の時点で佐々木氏の指摘を知っていたことになるのだ、と牽強付会してみる。

*1:

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)

2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書)