k-takahashi's blog

個人雑記用

ニュートン2010年3月号

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 特集は脳研究。といっても、ニュートンなので怪しげなものではなく、測定技術の進歩や実験結果の紹介が中心。
脳内神経回路網の変化(神経細胞自体の性質が変わっていく。神経回路の無駄が減ったあとに、神経伝達物質がGABAからグリシンという反応時間の短いものに変わる)、神経細胞の修復の様子(ミクログリアが検診を行っていることを示す実験結果)、脳細胞の活動をあやつる技術(チャネルロドプシンやハロロドプシンといった、光に反応する物質を使って神経活動を制御する)、神経細胞の形状的変化と記憶の関係(シナプスにある、信号を受けるスパインという突起の大きさが変わる様子の測定)、道具の使い方を学習させたときの猿の脳の体積変化(頭頂間溝部皮質、第2体性感覚野、上側頭溝部皮質、の3カ所が大きく膨張。ここが知性に関わっている可能性)、など。
 他にも「鬱病ロボット」(将来報酬を極端に低く評価する関数を持ったロボット。ここから、セロトニンの大小と将来報酬評価の関係という仮説をたて、ヒトでも似た結果が得られている)、CMの影響(古典的条件付け(コーヒーのロゴを見るとコーヒーが飲みたくなる)と道具的条件付け(コーヒーを飲みたいのでコーヒーを探す)とは本来別の行動なのだが、CMにはこの2つを結びつける効果がある)とか、面白い話題を一つ一つ解説してくれている。


 写真としては、スピッツァーハクトウワシ、オーロラなど。
オーロラの写真の中に、湖にオーロラが映り込んでいる写真がある。オーロラが見られるのは高緯度地域。高緯度地域では湖の凍らない夏は夜がほとんどなく、夜の長い冬は湖が凍結する。なので、こういう写真はなかなか取れないそうだ。(pp.92-93)


 もう一つ面白かったのが、動物の表面の模様の話。以前にエピジェネティックス的に決まるので、一度黒くなった部位は細胞が入れ替わったもそのままだ、という説明を読んだことがあるが、別のメカニズムもあるようだ。
 記事で紹介されているのが、チューリングの反応拡散方程式。網目模様、縞模様、斑点模様などが同じ理論で説明できることや、縞の増加や欠損時の修復などがうまく説明できている。
マウスの体表に移動する波を再現する実験写真(p.104)は非常に面白い。これと、拡散係数自体を制御する手法とを組み合わせると、もっととんでもないことができそう。