- 作者: 金子隆一
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2010/02/16
- メディア: 新書
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内容はオーソドックス、と言いたいところだが、若干カバー範囲は広め。今西進化論をかなり好意的に紹介している、と言えば分かるだろうか。
絶滅の方は、例の白亜紀末の絶滅の理由を、隕石ではなくスーパープリュームに求める立場に立っている。他にも、超新星説やガンマ線バースト説なども紹介しており、俯瞰するにはよい記述になっている。
ただ、今月初めに
その結果、「チチュルブ衝突による環境変動で大量絶滅が統一的に説明できることが明らかになった」という。根拠として(1)世界約350地点で報告された白亜紀末の地層にチチュルブ衝突起源の物質が含まれる、(2)衝突と大量絶滅のタイミングは厳密に一致していることを確認、(3)数値計算によれば、衝突で大気中に放出された粉塵や森林火災によるすすなどは、光合成生物の活動を長期間停止させうる──という。食物連鎖のベースとなる光合成生物=植物プランクトンが死滅したことで、恐竜などの大型生物の食料がなくなり、絶滅したと結論した。
恐竜絶滅の原因は「ユカタン半島の地球外天体衝突」 国際グループが「論争に終止符」 - ITmedia NEWS
一方、火山噴火は約100万年にわたったものの、環境に与えた変化は小さく、火山活動が最も活発だった時期には大量絶滅が起きていないことなどから、絶滅を説明できないとして退けた。また複数の天体衝突説も、白亜紀末を含む1000万年間のイリジウム濃集度を調べた研究から、この間の巨大天体衝突はチチュルブのみだったと結論した。
という発表があり、本書の記述とは違ってきている。例えば、本書では衝突時期はK-T境界層より30万年前だったのは「ほぼ確実」と言い切っているし、K-T層のイリジウムも隕石衝突の飛散物ではないとしている。もちろん、科学理論なんてのは論争と検証の繰り返しだから、これで終わりなどと言うものではない。
ただ、金子先生が、上記の発表をどう評価しているのかは聞いてみたい。