k-takahashi's blog

個人雑記用

アホの壁

アホの壁 (新潮新書)

アホの壁 (新潮新書)

小生はただちにお断り申し上げた。だってそうでしょうが。筒井康隆が「人間の器量」などという本を書いたら人が笑うし、そんなもの売れるわけがないのである。(p.4)

小生が考えた「アホの壁」とは、養老さんの「バカの壁」のような人と人との間のコミュニケーションを阻害する壁ではなく、人それぞれの、良識とアホとの間に立ちはだかる壁のことである。文化的であり文明人であるはずの現代人が、なぜ簡単に壁を乗り越えてアホの側に行ってしまうのか。人に良識を忘れさせアホの壁を乗り越えさせるものは何か。小生はそれを考えてみようと思ったのだ。(p.6)

 人がアホな言動を行う理由は何か、というところ実例を交えて筒井風に軽くまとめた一冊。トピック紹介も色々とある。ただ、内容的にはそれほどとんでもない話は少なく、一般向けの書籍としてまとめられている。


 そうそう、SF関係のエピソードが一つあったので引用。

ある時町中で、SF同人誌「宇宙塵」の主催者である柴野拓美に原稿を入れた封筒を託けたところ、柴野誌は横断歩道へのその封筒を取り落とした。
「あっ。フロイト的過ちだ」とおれが言ったため、柴野氏は苦笑した。
宇宙塵」におれの作品を掲載したくないのだろうという意味になることを、むろん柴野氏も知っていたのである。
「筒井さん、なんであんなこと言ったんですか」一緒にいた眉村卓があとで笑いながら言った。「柴野さん困ってたじゃないですか」
左様。フロイトを読むとこんな具合に人の行為や言葉を分析して喜び、人から嫌われることになる。(pp.58-59)