- 作者: 瀬名秀明
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/10/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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中学生向けということで、こんなスタートをしている。
「こんなにロボットが発展していったら、将来ロボットが人類に反乱を起こすことはありませんか?」
ロボットのイベントや講演会で話をすると、かなりの頻度でこんな質問を投げかけられます。
(中略)
実は、本書の企画を僕に持ちかけてきた編集者も、そして河出書房新社の編集部も、ロボットの反乱を怖れているようなのでした。編集者は何度もぼくにその可能性を尋ねてきました。
でも本書は、そうした大人の不安とは一線を画したところから始めたいのです。(pp.10-13)
そして、
では、無邪気に「ロボットは友だち!」とスローガンを掲げるのがよいかと言われると、それも違うとぼくは思うのですね。だいたいぼくたちはそんなに簡単に誰かと友だちになれるわけではありません。
(中略)
相手がロボットならすぐに友だちになれると考えるのは傲慢な態度だと思っています。ロボットだけがなんでもうまくいく友だちであるはずはないのです。(p.15)
そして、根本的な立ち位置として3つの前提を置いている。
- ロボットのデザインは僕たちの想像力に縛られる。これがロボットとの付き合い方を考えるうえでの重要ポイントその1。
- 単なるシミュレーションと大きく違う点です。ロボットには厳然として実態が存在する。これがロボットとの付き合い方を考えるうえでの重要ポイントその2です。
- 重要ポイントその3は、現実のロボットと空想のロボットとの関係性です。
そのあとは、ロボコンの話、産業用ロボット、エンターテインメントロボット、研究用ロボットの説明、コミュニケーションサイエンスの芽としてのロボット学、サイボーグやエンハンスメントの社会受容の話などが分かりやすくまとまっている。
変な軍事アレルギーが顔を出しているところがあって、そのせいでDARPAグランドチャレンジが飛ばされてしまっているのかもしれなくて、ちょっと残念。
最終章では、科学や工学以外の分野でのロボットの付き合い方の例として、マンガやアニメで「未来にフラッグを立てる」(想像して、それを作品として創造して、世に問う)をあげている。こういうところは、いかにも瀬名先生らしい。「三次元の知性」(普通人間は二次元の範囲でしかものを考えない、でもものの把握の仕方にはもっと違う方法もある、という話)とかは面白い表現だと思うけれどもっと広げられそうだ。とは言え、中学生相手の本であまり暴走するのはNGなんだろうな。