k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2011年11月号

軍事研究 2011年 11月号 [雑誌]

軍事研究 2011年 11月号 [雑誌]

先月のF-35に続いて今月号では、タイフーンの紹介&インタビュー記事(BAEシステムズ上級軍事顧問のグレン・トーピー卿)が掲載されている。『ユーロファイタ一・タイフーンの実力』(青木謙知)。多用途性を先日のリビアで実証したことやブラックボックスフリーなところなどを強調している。


イムリーだったのが、『カダフィの「傭兵調達システム」』(阿部琢磨)。
部族ベースのハミス旅団を別にすると、主力は昔から傭兵。クーデター騒ぎなどを通じて「国軍より傭兵の方が信用できる」という状態になり、それを支えるための傭兵供給システムが作られていたという内容。
アラブの盟主からアフリカの盟主に切り替えて以降の「パン・アフリカ・レギオン」と呼ばれるシステムがそれで、リビア国内で訓練し、「卒業生」を各地の実戦に投入、必要になったらリビアに呼び戻すという仕組みで、維持費がかからず補充が効くというなかなか上手いシステム。
更に、自治権獲得の際にカダフィに支援して貰って以来の付き合いとなるトアレグ族傭兵。
そして、周辺国で経験を積んでいた傭兵や、にわか兵士までが金に釣られてやってきているとか。また、白人ではセルビア系の傭兵がいるようだ。
などなど色々な流れを紹介している。一方で、いわゆるPMCは「今回の紛争は割に合わない」として距離を置いているそうだ。内戦後の事業に目標を定めているらしい。


『米軍のE-6/E-8C大型特殊電子改造機』(石川潤一)は、707をベースに改造した電子戦機(マーキュリーとジョイントSTARS)の紹介記事。
任務の性格上広いキャビンが重要で、707の出番となる。エンジンがポイントと書かれているのだが、E-8CのエンジンはTF33という半世紀以上前の古いもので、もう限界が近い。そこで、2002年にJT8D-219への換装が決まった。これがイラク戦の影響で作業が遅れており、さらに後継機体をどうするかという話も絡んでいる。


主翼のメカニズム』(青木謙知}は、なぜ現在の最新戦闘機の主翼がみな切り落としデルタなのかの解説記事。
高速化により直線翼では衝撃波が発生してしまう。これを抑制するために主翼に後退角を付けた。しかし後退角を大きくすると失速しやすくなる。また、アスペクト比を小さくする方が高速時の性能は良くなるが航続距離は下がる。後退角を大きくし、揚力を確保し、アスペクト比を小さく出来るのがデルタ翼デルタ翼の問題点は、抵抗の増加と方向安定性の低下。翼を薄くして抵抗を下げ、水平安定版を加えて安定性を増したものが現在の主流、という流れになる。
これにステルス対策とかが加わることになる。


災害対策関係では、311震災対応で派遣された警察部隊のロジの問題(寝るところや食べ物の確保が大変だった、という話。普通の警官は野営訓練はしていない。当然と言えば当然だが)や9月の「沖縄総合防災訓練」のレポートなどがあった。
今までは「ゆうだち」が石垣島の港に入れるかどうか分からなかったが今回は測量の結果可能と判明し初入港となった、というのは、海洋調査の重要性を示すエピソードだと思う。
ただ、芦川淳氏のレポートに依れば、米軍の訓練参加を沖縄県が止めさせた可能性があるとか。まだ、そんな連中がいるのか。


『太平洋戦争の日系二世語学兵』(永井忠広)は、米陸軍情報部付で太平洋戦線で戦った日系語学兵についての記事。
投降勧告の交渉に出かけて、「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず」と自らの立場を説明したとか、大変な苦労だったようだが、重要情報の分析など効果は大きく、彼らの立場を知っている上官達は非常に大事に扱っていたそうだ。
彼らは終戦後も、占領軍と日本人との架け橋として働いた。イラクやアフガンから米国に移住した人たちというのもいるはずだが、数が足りなかったのだろうかな。