- 作者: グレッグ・イーガン,鷲尾直広,山岸 真
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/09/22
- メディア: 文庫
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一番分かりやすいのが『エキストラ』。ただ、これもいわゆる「アップロード」や身体性、仮想空間など他のイーガン作品との関わりを考えると、見かけほど簡単ではないかも。
表題作の『プランク・ダイヴ』は、物理学の部分をすっ飛ばせば分かりやすい話なのだが、知的好奇心の探求と精神の解放とが合わさった話なので、物理部分をすっ飛ばすと本作の意味が希薄になってしまうという困りものの短編。もっとも、本短篇集はそんな話ばかりですが。
『暗黒整数』は『ルミナス』の続編。これだけは、先行作品である『ルミナス』を読んでおかないと分け分からないと思うけれど、本書に手を出す人が『ルミナス』を読んでいないはずはないか。
『グローリー』は、冒頭の宇宙航行描写が秀逸。
星の光に照り輝く金属水素の鋳塊は、長さ50センチメートルの細い円柱で質量は約1キログラム。肉眼では高密度の固体に見えるが、その微小な核の格子はごく希薄な電子の霧の中に埋もれ居ていて、物質一に対して空間二百兆の割合だ。少し離れたところには別のインゴットがあり、見た目は最初のものと同寸同型だが、反水素で出来ている。
精密に調節された一連のガンマ線が、両方のシリンダーに大量に注ぎ込まれた。それを最初のインゴットの中で吸収した陽子が、陽電子を放出して中性子に変化し、雄牛を一定の場所にとどめていた電子雲との束縛を断ち切った。第二のインゴットの中では、反陽子が反中性子になった。(p.181)
こんな調子で8ページ近く。
後半は打って変わったトーン。これも学術探究と社会的軋轢とその先と、という話でもあり、ディアスポラに繋がる面がある。
『ワンの絨毯』は私が初めて読んだイーガン作品。惑星オルフェウスで見つかったのは重さ2500万キログラムの単分子の二次元ポリマー。それが実は、という話。最初に読んだときにもたまげたのだが、再読してもやっぱりたまげる。
こうして一つにまとまると、同じテーマが何度も出てきているのが分かりやすい。
大変ですけど、お薦めの一冊。
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