k-takahashi's blog

個人雑記用

ニュートン 2012年10月号

Newton (ニュートン) 2012年 10月号 [雑誌]

Newton (ニュートン) 2012年 10月号 [雑誌]

表紙を見ると分かるけれど、トップが「卵子の老化」。昔、「羊水が腐る」と暴言を吐いたタレントがいたけれど、6月のNHK番組で色々あったのでそのフォローということなのかな。

卵子の老化とは

科学的事実として、不妊率(一度人視した年齢以後子供をもうけられない確率)が加齢とともに上がっていくこと、原始卵胞数が年齢とともに減っていくこと、減数分裂時の異常発生率が高まること、は知られている。
結局、発生という過激な変化を起こす細胞(生殖細胞)に加齢の影響が出るのはある程度当然ということなのだろう。(顆粒膜細胞による活性物質の提供、ミトコンドリアの数、小胞体のカルシウムポンプ、などいずれも)


女性の場合は原始卵胞を出生前に作ってしまうという事情があるが、男性の場合でも細胞自体の加齢の影響はあるとのこと。
この辺は、不妊治療の観点から知見が色々と溜まっており、研究も進んでいる。

ダークエネルギー

先月号がダークマター、今月号がダークエネルギー。内容は普通の解説。
Ia型超新星爆発の観測だけでなく、バリオン震動の観測。WMAPの観測結果、からもダークエネルギーの存在が示唆されるという観測事実をまず解説。
インフレーションとダークエネルギーによる膨張加速が同じものか、という問いかけもあるそうだ。
また、もし宇宙が非一様ならダークエネルギーは考えなくても良いとか、重力の影響が遠距離で二乗則に従わなかったとしたらダークエネルギーがなくても観測結果と合うとか、色々な話もでてきている。
アインシュタインの宇宙項がダークエネルギーと同じものだと言われているが、実はダークエネルギーが一様でない可能性もあるとか、相変わらず宇宙論はわけわからなくて、面白い。

40億年後、アンドロメダ銀河と天の川銀河が衝突(p.14)

衝突することはよく知られているが、最近精密な速度が測定され、さらに確度が高まったとか。
誌面には、接近・衝突時に、夜空がどう見えるかのイラストもある。巨大なアンドロメダ銀河が空を覆う絵は面白い。

RNA(pp.46-)

第二特集はこちら。RNA大陸とか、RNAワールド仮説の解説といった感じの記事。
分かっていないのは、長いRNAの役割とか、酵素の働きをするRNA(リボザイム)ができるメカニズムとかのあたり。


一方、RNAの仕組みが分かってきたことで、難病治療に使えるようになったきたということも紹介。筋ジストロフィーはあるタンパク質が出来なくなる病気で、それはタンパク質の製造が偽の停止信号のため途中で止まってしまうから。この偽の停止信号をブロックすることがRNAで可能になるので、ここを細工してやればタンパク質が製造できるようになる。そんな感じの薬が作れるそうだ。
同じ方法で異常なタンパク質の製造を止めることも可能。
標的が明確でしかもRNAは分解しやすいので副作用が少ないのも特徴。但し、分解しやすいのでデリバリーシステムの開発も必要となる。(現在、眼病への適用が先行しているのは、患部にアクセスしやすいという理由が大きい。)

ダイソン(p.117)

例のダイソンの羽根のない扇風機の技術解説。
ジェットエンジンの空気圧縮技術」とか「翼型傾斜」とか、名前だけでもわくわく。

小松英一郎氏 インタビュー(pp.112)

マックスプランク宇宙物理学研究所所長の小松英一郎氏の4ページインタビュー。
被引用数世界一の話の中で、観測結果から理論のほころびの有無を丹念に調べたということを紹介していた。

僕たちは、まるで宇宙を実際に見てきたかのようなことをいいますよね。それは、本当に「実際に見てきている」からにほかならないんですよ。(p.115)


また、

そもそも、インフレーションというのはむちゃくちゃなことなんですよ。現在宇宙は加速膨張していて100億年後には宇宙の大きさは2倍になると言われています。それにくらべて、現在のインフレーション理論では、宇宙の最初の10^34分の1秒の間に大きさが数十けたも増大したというわけですから、こんなむちゃくちゃなことはないですよね。簡単に信じてはいけませんよ。(p.115)

とも。