k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2012年12月号

軍事研究 2012年 12月号 [雑誌]

軍事研究 2012年 12月号 [雑誌]

概算要求

平成25年度概算要求の解説記事が陸海空で3本。


陸自分は田村尚也氏。

近年の『防衛白書』のように、各師団・旅団を「総合近代化師団・旅団」と「即応近代化師団・旅団」の二種類に区別することがなくなったと見るべきかもしれない。(p.45)

もっとも注目されるのは「水陸両用車の参考品」の購入で、4両分25億円が計上されている。(p.48)

来年度の概算要求額は、今年度の概算要求額に比べて実に940億円(5.2%)もの減となっている。(p.51)

最後のは、震災復旧・復興関連費で一部補われる模様。


海自分は、多田智彦氏。
氏の記事は概算要求を噛み砕いたもの。

目玉は新型の汎用護衛艦25DDの建造だ。懸念された対空ミサイルの削減はなく、汎用能力は維持され、高性能な対潜装備(バイ・マリツスタティック機能)が採用された。(p.52)


航空分は、小林晴彦氏。

平成25年度に業務計画では大規模な編成事業が計画されている。なかでも「航空戦術団(仮称)」の新編には注目が集まっている(p.68)

F-35について)
期待の調達価格と初年度費については今後の米国側との交渉次第で変更が生じる可能性は大きく、12月末の平成25年度予算案編成に向けた日米間の交渉の行方は注視する必要がある(p.71)

航空自衛隊のT-7諸島練習機用部品およびF-15戦闘機用F100エンジン用部品の一部を対象にPBLの思考を実施するとしている。(p.78)

PBLはパフォーマンスの達成に対価を支払う契約形態のこと。


あと、UH-X問題についての懸念も書かれていた。なんか違うんじゃないの?という指摘。

竹島奪還、沖縄侵攻

「2020年、自衛隊竹島奪還作戦」(三鷹聡)という記事が載っている。10年後に想定される軍事状況をベースにした考察だが、筆者自身が「絵空事」と言い切っているように、リアリティはほぼなく、日韓ともに得することはなにもない。
逆に言えば、韓国がどんなに噴き上がったところで10年程度でどうなるものでもないということであり、長期的な視野が必要なんだと捉えるべき話だろう。


「2025年、中国による沖縄侵攻のシナリオ」(矢野義昭)は、中東動乱の最中に中共が沖縄を14日間で「解放」、合わせてロシアも北海道侵攻も発生するというシナリオ。こちらは、竹島解放よりは差し迫っているけれど、それなりに条件が揃う必要があるのも事実で、そうならないように準備しようというのが主眼。

中国の対艦弾道ミサイルとは何か(前編)

田中三郎氏の記事。編成や配備状況の解説。
興味深かったのが以下の指摘。

「作戦運用(operational)」という用語の定義は米中韓で異なるものだ。2010年12月、ウィラード米太平洋軍司令官が”ASBMは「初期作戦能力(IOC:Initial Operational Capabiility)」レベルに達している”との見方を示したが、これは米国基準の評価であり、陳上将が言及している「Operational」段階にあるシステムとは、米国基準で言うなら「完全作戦能力(FOC:Full Operational Capability)」つまり、より高い審査基準を満たしている段階での基準だ見られる。(p.83)

オスプレイ

「航空機の世代交代進む米海兵隊航空」(石川潤一)は、海兵隊航空機の現状について。飛行体のリストを示し、海兵隊の有する航空戦力の規模と、その中に占めるオスプレイの比率を解説している。配備済みの飛行体は既に10以上、一方代替されるCH-64Eを装備しているのは予備役を除けば4個飛行隊しかない。一部報道にあるような「オスプレイ=試験段階」という見方は間違っているというわけだ。


普天間オスプレイ操縦体験」(芦川淳)は、普天間でシミュレータを動かしてみたという体験記。シミュレータとは言え正規の訓練用で、実際飛ばしてみて感じたスムーズさなどを体験談として書いている。

グルジア

カフカス地域についての小泉悠氏の記事。
グルジアでは政権が変わったが、NATO加盟追求という路線は変わらず。米国との協力も続いており、調査団によるレポート、軍事顧問の派遣などが実施されている。
もう一つの大問題であるアルメニアアゼルバイジャン問題。石油収入を持つアゼルバイジャンが軍事費でも圧倒しているが、アルメニアにはロシアの第102軍事基地がある。ロシアからこの第102軍事基地への補給がイラン経由となっているため、ロシアが国連でのイラン制裁に反対しているという事情もあるそうだ。

ハンヴィー後継

阿部琢磨氏(肩書きが「ミリタリービジネス研究家」になっていた)による記事。
ジープ後継として普及したハンヴィーだがIEDにより被害が拡大。MRAPは兵士を守るという点では有効だったが、高価(1両100万ドル)で重い(輸送や機動性に難)という問題があった。
MRAPの新カテゴリーとして設定されたM-ATVは、機動性の問題を解決し米陸軍のMRAPの3分の1を占めるに至ったが、重量と価格の問題は残っており、海兵隊は採用していない。
その更に後継であるJTLVもある程度軌道に乗ってきたが、将来的な価格の問題はまだ残っている。