k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2013年6月号

軍事研究 2013年 06月号 [雑誌]

軍事研究 2013年 06月号 [雑誌]

巻頭言

先日のボストン爆弾テロについて、

今回は個別的とも考えられるタイプのテロを未然に防ぐことが如何に難しいかを思い知らされた。他方、このタイプのテロが起きた場合、国・地域社会・個人が、素早く犯人を特定し探し出す「対テロ能力」を持っていたことが明らかになった。もし、容疑者が捕らわれずに闇に消えたとなれば、どんなに大きい社会不安が残ったことであろう。

という、両面からの言及があり、面白い見方だなと思った。(志方俊之氏)

中国潜水艦の天敵「P-1」(竹内修)

巻頭カラーページにもP-1の写真があったが、量産機の配備が始まったP-1の記事。
実用機としては世界初となるフライ・バイ・ライトは、電子機器を多用する哨戒機には向いているシステム。戦術判断システムは国産のHYQ-3で、この種のシステムの搭載も哨戒機としては世界初。
P-3Cの8900kmに比べてやや航続距離で劣る(8000km)が、速度が上がっているので哨戒可能時間は増えることになる。また、対舟艇ミサイル(AGM-65)の運用能力もあり、本来の任務外ではあるが、島嶼防衛戦にも利用可能。
米海軍との協力が前提となるためLINK16にも対応。あたりがポイントかな。確かに、中国にとっては目障りだろう。

新空対艦誘導弾「ASM-3」(宮脇俊幸)

1970年代後半に、XAAM-2の量産か、AIM-4の取得か、となりこのときは圧倒的なコスト差でAIM-4となった。その経験もあり、ASM-3ではコストも意識して開発したとのこと。
その辺も含めて、国産対艦ミサイルの開発史とASM-3の紹介記事。

中国軍装備関連

「空母遼寧号「青島某軍港」を母港に」(田中三郎)は、遼寧の母港が10万トン級の艦船の停泊が可能な青島になった模様であること、この近くには興城中国海軍空母搭載機試験センター基地があり、ここが単なる訓練基地ではなく艦載機の陸上基地であること、を説明している。

「中国海軍の最新鋭防空ミサイル戦闘艦」(多田智彦)は、空母護衛用のミサイル駆逐艦について。052D型「旅洋?」級駆逐艦が本命視されており、その装備解説。しかし、大量建造(大軍拡)だなあ。

「中国の最新型戦闘機フランカーの全貌」(石川潤一)は、中国軍のフランカーの解説。ロシアからスホーイSu-35Sを買ってエンジンとセンサー類をコピーし、それをフランカーに搭載する、という方向らしい。これがどの程度になるかは日本にも大きく影響する話。

海自の電子戦能力(井上孝司)

先月号の記事の続きで、電子情報収集がどのように行われ、何が分かるか、などの解説の記事。

実際、件の射撃管制レーダー照射事件の後で、海自関係者の話として「砲が別の方向を向いていたので、撃ってくることはないと判断した」という発言がマスコミ報道で伝えられた。この発言が事実だとすれば、「なぜミサイル発射機ではなく、砲の向きを見たのか?」という疑問が生じて、さらに「砲射撃管制レーダーによる照射だと判断するだけの材料があったのではないか?」という推測に繋がる。(p.94)

など、ちょとした発言からも、海自がどこまで分かっているかが伺えるようだ。普段からの情報収集と整理は大事。

「アイアンフィスト13」取材記(前編)(菊池雅之)

今年の1月〜2月に行われた日米共同訓練のレポ。昨年11月の訓練が岡田副総理の横やりでお流れになり、カリフォルニアでの訓練となったという案配のようだ。もっとも、こういった上陸演習がやれる場所が日本にはほとんどないのも事実だとのこと。
ひっくり返ったボートを元に戻す訓練なんて、確かにプールでは無理だろう。

F-35の「トラブル」診断書(青木謙知)

2月に飛行停止措置が出たF-35(この措置は、一週間で解除)だが、その前にも2件の飛行停止措置が執られている。1回目が2006年の電気回路ショート。このときはパワー・バイ・ワイヤという操縦システムに関わる問題だったためか、解除まで約1年かかっている。2回目が、2013年1月の燃料系トラブルで、1か月で解除。
787のバッテリー問題もそうだけれど、新技術にはどうしてもトラブルがつきまとう。その辺の対応力も開発力の一部なんだろう。(こちらは、記事執筆後の4/26に解除、約5か月。)


F-35と言えば、記事中にある「高迎角およびデパーチャー試験」

の試験映像が公開されていた。飛行限界を確認するため、失速するまで無理をし、その後立て直せることを確認する試験。

ロシア軍の生物・化学兵器プログラム(小泉悠)

ロシア軍のBC兵器の解説記事。禁止条約に署名しながら削減に消極的で、米国の支援も断り、その結果、拡散の問題が増しているという、なかなか困った状態らしい。
生物兵器関連では、1972年に生物兵器禁止条約(BWC。本文にはCWCとあるが、多分誤植。)に加盟したが、その翌年に全連邦化学生産合同「ビオプレパラート(生物プレパラート)という研究開発機関を創設するというインチキっぷり。
化学兵器についても「条約に違反しない」目的でノヴィチョークという化学兵器を開発している。(2液を混合すると毒性を増す。単独での毒性は低いため条約に引っかからない、という理屈。)
核兵器同様、ロシアの大国意識、対米意識が対応の遅れの原因の一つとなっているようだ。