- 作者: 瀬名秀明
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2012/10/05
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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しかし、瀬名作品って、いつの間にやらテロリストの出現頻度が随分高くなったきたなあ。
NOVA 10 - k-takahashi’s 雑記
と書いたばかりだけれど、本書にその答えが書いてありました。読む順番が逆だったかも。
瀬名の講演や対談などをもとに再構成した一冊。瀬名風の問題意識というか、屈折振りというか、SFファンにケンカを売る態度というか、そういうのは相変わらずです。
ということで、自分用に気になったところをメモ。
科学技術の想像力は実現できるが、社会デザインの構想、すなわちユートピアの夢は、極めて実現が難しいのだ。
(中略)
人は「不可能なこと」を思い描いてそれを可能にする力がある。だがそれは科学技術の分野に限定されるのではないか。
(p.55)
なので、「未来社会を空想する」というのを最近の瀬名は目指しているようだ。
僕たちの倫理観が時代と共に動いていることを端的に示している。(pp.85-86)
ロボットと人間の距離感、人体をいじることについて、の描写が時間と共に変わることについて。
(フランケンシュタインが、又聞き風に書かれている、という指摘に続いて)
そういう入れ子構造っていうのは、まさに私たちが他者を認識したり推測したりする、そういう入れ子構造と全く同じだ。つまり、フランケンシュタインの小説は、SFの元祖であるし、他者の心を推測する、心の問題の元祖の小説でもある、それから生命と非生命のはざまを書いたそういう小説でもあると言うことだ。『デカルトの密室』というぼくの書いた、むずかしくて読みづらいという評判の小説は、こういう遺産を受け継いで作られている。(p.102)
他にも、瀬名作品(フィクション、ノンフィクション両方)についての、瀬名本人による解説が多いので、そういう方面からも面白いです。
一例を抜き出しておくと、『鉄人兵団』についての以下の部分。
話の途中でドラえもんがこのミクロスに知能を持たせてあげる。すると、「すげぇ、一人で喋ってる!」と驚くスネ夫やジャイアンに対して、「人間なみの知能を持たせたんだ」ってドラえもんがいう。でも実はこれ昔の映画だと台詞が違っていて、あそこは「人間なみの知能」っていわないで、「スネ夫なみの知能を持たせたんだ」といっていた。ぼくもかいていたはじめて気がついたのだが、これはなかなか重要なことだ。(pp.126-127)
リルルが女の子の外見をしていることによる問題は、読んだときにもひっかかったけれど、こちらの「スネ夫なみ」のところは全然気がついていなかった。