k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2013年11月号

軍事研究 2013年 11月号 [雑誌]

軍事研究 2013年 11月号 [雑誌]

日本!弾道ミサイル保有に大きく前進(浜田一穂)

イプシロンロケット打ち上げ成功に合わせてちょっと煽ったタイトルで、実際中韓あたりが一通り騒いだ話だけれど、中身は普通。

日本の報道の混乱の一因には、衛星打ち上げ機(Satellite Launch Vehicle)あるいは宇宙打ち上げ機(Space Launch Vehicle)という用語(概念)を普及させなかった宇宙開発業界の怠慢もあるように思う。(p.29)

と、ロケットとミサイルをごっちゃにしている要因を指摘している。


なお、これでICBMが作れるのかというとそんなことはなく、

日本のICBM開発の最大の技術的ネックは再突入体の開発だろう。(p.39)

ということで簡単にできるものではない。もちろん、中国を狙うなら、二段で充分だからもっと軽量化できるという言い方は可能。

グローバルホークとMQ-8Cファイアスカウト(青木謙知)

ノースロップ・グラマンのUAV2機種の紹介記事。
ちなみに、グローバルホーク1回のミッション(36時間)で、有人偵察機6ソーティ分に相当するという評価だそうだ。

最新設備で新生『潜水医学実験隊』(小林直樹)

水中のついて研究する自衛隊の「海上自衛隊潜水医学実験隊」の紹介記事。ここでは、「潜水医学(広義)」を「潜水医学(狭義)」と「潜水艦医学」に分けている。

狭義の潜水医学とは、飽和潜水、短時間潜水、潜水員の衛生管理、潜水装備品を研究項目としている。
一方、潜水艦医学とは、潜水艦における環境衛生、潜水艦乗組員の衛生管理、潜水艦装備品などについての研究を行うことをいう。(p.52)

飽和潜水とは、作業深度における人体への不活性ガスの取り込みを飽和させ、連続的に作業を行うこと。この飽和潜水の研究では自衛隊は世界トップレベルにある。実は、米ロ両国は深海での作業のロボット化を期待して飽和潜水の研究を絞っていた。そのため2000年のバレンツ海でのクルスク事故で、ノルウェーやイギリスが出てくるということになった。(この事故の後、両国とも飽和潜水の研究を再開した)


高圧下については、こんなエピソードが紹介されている。

高圧になると、味覚が変わってきます。DDCでの生活で食事をすると、味が薄く感じるようになる。あと、高圧のため空気が重くなり、鼻ではなく口での呼吸が多くなりますし、食事中に息を吸う際には、気をつけないと口の中の食べものも一緒に吸い込んで誤嚥しやすくなります。(p.57)

でも水分はまだいい方で、例えば普通のあめ玉。あめ玉の中には小さな空洞、つまり気泡があたくさんありますが、DDC内圧からすれば気泡内は極端な陰圧になるので、気にしないでなめていると、これが吸いついて舌や口腔内が切れ、血だらけになったりします。(p.57)

アサド政権の市民殺戮がつづくシリアの内戦(黒井文太郎)

アサド政権とロシアが一応化学兵器については対応をしたのではあるが、

化学兵器使用を止めるだけで、通常兵器による砲撃や空爆は黙認されたことになるからあ、今後は心置きなく一般市民を巻き添えにして大規模な攻撃に出ることができる(p.106)

と、冷静な分析。

集団的自衛権とは何か!?』(濱田浩一郎)

集団的自衛権についての解説。著者は「九条改正が先」という主張だが、

私は、安保法制懇が打ち出そうとしている集団的自衛権の広範囲認可に懐疑的なのである。安保法制懇には、賛成派だけでなく、反対派や中立派も多数入れて議論し、「これだけはやっていはいけない」というネガティブリストも挙げるべきだ。(p.117)

という意見を書いている。

ペルシャ湾掃海回想録(3)(落合蔲)

ペルシャ湾掃海部隊指揮官の落合氏の回想録。今回は、内々に準備し、発表があって大変で、実際に現場無い向かう辺りの話。

普通、人事に関する要望は「ほとんど実現」しない「単なる願望」というのが概ねの定番である。しかし、このときは、全部要望通りピシャリと人事発令された。(p.149)

掃海部隊の隊員充足率は普段は70%くらいであるが、
(中略)
各艦艇の充足率を100%にすることとされ、隊員の補充が実施された。(p.149)

と、自衛隊内ではかなり優遇してもらったが、派遣決定後は、マスコミの取材攻勢や、関係者への放火など大変だったようだ。


なお、派遣期間中に留守家族で生まれた新生児は12人だったそうで、自衛隊員の家族も大変だ。


食事についてもこんなエピソードが。

派遣部隊511名の隊員達の年齢は平均32.5才と比較的若い集団でもあり、日本を出発する頃は機構の快適さも加わり、嗜好調査の結果「ビフテキ」等の肉料理を希望するものが多かった。しかし、気温が上昇してくるにつれて、脂っこい肉料理よりも「鰺の開き」「冷や奴」「小松菜のお浸し」等のアッサリしたたものの希望が多くなってきた。(p.160)

なお、日本食材はドバイでたっぷり買えたそうです。

平成26年陸上自衛隊概算要求を読む(田村尚也)

概算要求のうち陸自関係についての解説。

今回の概算要求では、空自の要求額が突出して伸びており、次いで陸自が三自衛隊平均を上回る伸びとなっているのに対して、海自は平均以下の伸びに抑えられている。(p.200)

実員の要求は101人の増となる。
この増員要求がどこまで認められるのか。(p.202)

もっとも注目されるのは、水陸両用準備隊の編成で、部隊規模は30人ほどになるようだ。(p.202)

陸自の北部および西部方面航空隊の本部付隊や、第1ヘリコプター団の連絡偵察飛行隊、第15旅団隷下の第15飛行隊などに配備されている固定翼の連絡偵察機LR-2のパイロットは、回転翼機から機種転換しており、固定翼機と回転翼機の両方が操縦できる。つまり、陸自の航空科にはオスプレイのようなティルトローター機の操縦にうってつけの人材プールがすでに存在しているのだ。(p.205)

復活する大ロシアの航空宇宙戦力(小泉悠)

モスクワ航空宇宙サロンの紹介記事。
第五世代戦闘機の試作機PAK-FA/T-50、新型大型輸送機II-476の飛行展示が大きなトピック。
また、多くの新規契約が発表された(一番大きいのがSSJ-100の契約実績が192機に達した)一方で、MiG-35戦闘爆撃機の契約が「行われなかった」ことも大きなニュース。ポリソフ国防次官は「準備不足」と語ったとのこと。


ショーとは別に調達についての紹介もされているが、とにかく機種数が多い。これは、各メーカーに仕事を割り振ろうとする政治的な意図ではないか、と著者は分析している。


ウェポン・システムと「ソフトウェア」開発(井上孝司)

ソフトウェアをいくらバージョンアップして肥大化させても、ハードウェアが変わらなければ重量増加問題は引き起こさない。(p.223)

そりゃそうだ。