k-takahashi's blog

個人雑記用

ルールを変える思考法 〜ニコニコ超会議の勝算は何だったのか?

会社ぐるみで「ブラウザ三国志」を遊んでいたことで知られる(?)、ドワンゴ社の川上量生会長。
4gamerでゲームが経営に役立つ(か?)というようなインタビューが載っていたこともあるけれど、実はそうでもないと言っている。理由は、

テレビゲームの致命的な欠点は以下の3つです。
1 人間が、コンピュータの決めたルールに従ってゲームをプレイする
2 反射的な思考能力の速さを競うゲームがほとんどである
3 コンピューター相手にゲームをやっても人間との付き合い方は学べない
(No.28)

だそうです。そんな川上会長が、ゲームとニコ動経営について語った一冊。


本書の一番面白いところは中盤のニコ動のマネタイズとか、終盤の「ニコニコ超会議」を巡る部分とかの話。
ここで、川上氏が巧妙に立ち回っている様子が書かれている。ポイントは「リアル側との付き合い」。
ウェブ企業はこの「リアルの扱い」が弱いところが多いが、逆に川上氏はそこが強いし、そこを強みと認識しているところがうまい。マネタイズについても、「まずプロを提供者側にして、ユーザに金を出させ、それを一般に開放する」という流れを作ったりしている。小沢一郎を使った辺りも、細かく書いていないけれど、色々あったんだろうなと思う。
また、ニコニコ超会議は「リアルとネットがぶつかる場」として捉えていて、ドワンゴ社を「リアル側をある程度コントロールできるネット起業」というポジションに置いている。そういう、うまくリアル側に取り入っている様子が興味深い。このへんの立ち回りの旨さはひろゆきとかと同じタイプ。


ゲーマーが経営者としてどうこうという話が前半にあって、その流れで「ブラウザ三国志」の話が出てくる。この部分もなかなか興味深いのだが、ブラウザ三国志で勝つためにやったことと、実際にニコ動関係(超会議とか)でやったこととが、確かに同じ方法論で進められている。(文書を作る、部下のモチベーションやコントロールに気を遣う、自分で好き勝手やって相手の気持を踏みにじって気にしない態度、など)


ニコ動関係の部分にしても、ゲーム管理にしても、読んでいて頭がいいのがわかるし、うまく社会をわたっている様子も書かれている。文章も立ち回りの上手い人の文章だなあ、と思った。
ただ、同じ理由からだと思うが、彼が語るビジョンはどうも魅力がない。文書全体から「小賢しい」ような印象を受けてしまったからなのか、ウェブ側をうまく「操ってやろう」という思惑が見え隠れしているからか、その辺はよく分からないが、ともかく、そういう印象を受けた。まあ、ビジョンを語るよりもビジネスを回す方に、より大きな関心のある人なのだろう。


なので、本人に書かせるよりも、誰かインタビュアーが周辺を含めてきちんと聞き取ってまとめるともっと面白くなると思う。けど、難しいかな。


内容はニコ動やゲームの話が多いけれど、あくまでもビジネス書として読むのが良いと思う。
(ただ、川上氏は、本書自体を「他人を操る」ための道具として使っている面もあるような感じなので、その辺は自覚的になる必要があると思う。)