k-takahashi's blog

個人雑記用

スマホに満足してますか? 〜使いやすいUIとは

現在のスマホやパソコンが誰にとっても便利だと思っている人は、スティーブ・ジョブズビル・ゲイツに代表されるコンピュータメーカに騙されているのかもしれません。(No.20)


UIに関心のある人なら増井俊之の名前は聞いたことがあるだろう。プログラマーなら「富豪的プログラミング」という言葉を聞いたことがあると思う。どちらも知らないという人は、「POBox」はどうだろうか。2001年のソニエリの携帯「SO503i」で初登場した機能で、今では当たり前のように思われている予測変換の先駆けとなったUIである。


その増井俊之氏のエッセイ。UIの話が中心だが、「コンピュータとはどうあるべきか?」「人はどのようにコンピュータを使えば良いのか」という話題を色々な観点から語っている。「今のコンピュータ、本当に使いやすいですか?」というのも様々な切り口で語っていて面白い。

例えば、

誰もが普通に使っているコピー・ペースト操作では、コピー操作した文字列がコピーバッファに入っている状態がユーザに見えないため、コピー操作を行ったという事実をペースト完了までユーザがずっと記憶しておかなければならない、という心理的負担が発生します。
(中略)
小さな負担でも蓄積されると大きなイライラになってしまいます。(No.296)

コピペ操作の心理的負担をこのように明確に表現するのはあまりない。

能力がない人には、能力のある人のことを想像することはできません。
(中略)
逆に、能力や知識がある人は、それがない人の状況を想像することはできないのです。
(中略)
知識を得ることによって知識が無いときの状況が分からなくなると言う現象は、「Curse of Knowledge」(知識の呪縛)と呼ばれています。
(No.380)

説明書を読んだり書いたりするときに、こういう苦労をしたことのない人はいないだろう。それもこういう風に説明される。


エッセイ集といった感じなので、一つ一つの記事は短く読みやすい。
全体としてまとまりがあるというわけではないので、教科書的には使えないけれど、読んでいて面白い。


最近はやりの「ユーザ中心設計」についても、

ユーザ中心なのですから、ユーザの望むものをそのまま作れば良さそうに思われますが、ユーザは自分が望んでいるのか分からないのが普通であり、基本的な仕様に関してユーザに意見を求めることはできません。
GUIがまだ発明されていなかった頃、どんな入出力装置が欲しいか普通のユーザに質問したら、「打ちやすいキーボードがほしい」といった意見が返ってきたことでしょう。
(中略)
想像力は欠如しているものであり、直感と慣れを混同して慣れているものがいいものだと思ってしまうものなのです。
(No.1312)

と注意を促している。有名な「速い馬」のエピソードに通じるけれど、コンピュータもそうなってないか、ということ。


「じゃあ、どうするの?」という答えが本書に書いてあるわけではない。でも、そういうことを考え続けてきた人が、どんなことを考えているかは本書に書いてある。
あとは、自分の頭で考えよう。