去年の秋に
当初は小道具キャラだったが、藤子先生は意図的に隔離するようになった?ラノベ作家による『ドラえもん』の出木杉についての考察が面白い!
当初は小道具キャラだったが、藤子先生は意図的に隔離するようになった?ラノベ作家による『ドラえもん』の出木杉についての考察が面白い! - Togetter
というのがあって、そのときに「そう言えば、F先生の「のび太の恐竜」の初稿では出来杉も同行するんだったっけなあ、と思ったのだがどこで読んだか思い出せなかった。
で、それが見つかった(正確に言うと、紹介されている文書を見つけた)
・映画のプロトタイプF先生執筆「のび太の恐竜」シナリオを読む
(この同人誌自体は昨年末の発行なので、私がかつて読んだのはこれではない)
F先生ご自身で書かれた脚本は最終版の2倍近くの長さがあったという。そして最大の違いが出来杉が同行していること。彼の活躍シーンが色々紹介されている。
さて、実際には出来杉はカットされてしまうのだが、その辺についてはこう書かれている。
出来杉の初登場はコロコロ79年9月号。シナリオの第一稿の日付は79年9月22日。ほぼ同じ時期になっている。そして、出来杉が登場した理由は、
子供だけの集団が勝手の分からぬ白亜紀に遭難し、長期のサバイバル生活を行うことの大変さと奥深さを、シナリオ第一稿では特にリアルに描写しようと試みている。
それには誰か一人、確かな知識と大人びた冷静さを持って指揮を執る出来杉のような人物を加えなければ話が成立しにくい、と考えたのではないか
(同書 p.61)
ところが、
何もかも彼一人の活躍で解決してしまう難点
が出てきてしまう。そのため結局、出来杉はカットされてしまう。
出来杉が結局降板したことにより、彼が劇中で披露していた恐竜の知識や関心はスネ夫の役割に、知的なリーダーの役割はドラえもんに振り分けられた。
で、キャラが活躍する場面が増えたわけだが、影響はこれに留まらなかった。
ドラえもんが連載初期の「ロボットなりに知識は多少あるものの、案外マヌケでのび太と共にドタバタ」という道化の側面を弱めて、大長編での知的で責任感あるリーダードラえもん像を与えられるようになった。その契機がこの出来杉降板劇にあったのではないか?
一ファンとしての所感と憶測である。(p.61)
「大長編ドラえもん」を支えるためには、それなりの設定(能力)が登場人物には必要で、当初はゲストキャラ(出来杉)で補おうとしたが、レギュラーに割り振るようにした。その結果キャラクターは従来の造形から変化を遂げた、ということになる。
よく言われる「映画のジャイアン」なんかがその典型だし、それはドラえもんも同じであった、と。
出来杉は、この後も物語冒頭部で専門家的な登場をする(ヘビースモーカーズフォレストや魔法文明説明のエピソードは有名)。一方、登場人物の能力が上がったことで、ゲストキャラ(敵も味方も)もより強く・深く描けるようになったこともある。ストーリーの幅も「子供漫画」の枠を守りつつも広がっている。短編時代のキャラで、鉄人兵団や雲の王国のストーリーは重すぎただろうから。
結局、全体としてはキャラの強化は成功だったと言えるだろう。