k-takahashi's blog

個人雑記用

UFOとポストモダン

UFOとポストモダン (平凡社新書)

UFOとポストモダン (平凡社新書)


著者は、米国のUFO神話を3つの時期に分類している。1947-73年の「空飛ぶ円盤神話」、1973-95年の「エイリアン神話」、1995-の「ポストUFO神話」の3つである。そして、それらを区切るのが、コンドンレポートと宇宙人解剖フィルムだ、という位置づけ。
ここまでは、まあそうかも、という感じではある。


が、コンドンレポートを

近代のプロジェクトを体現する知である現代科学が、近代のプロジェクトの可能性の象徴だった空飛ぶ円盤を否定するということを意味していました。
すなわち、近代のプロジェクトは自らに残されていたかすかな夢を自分で否定し、自らの首を絞めたのです。(p.54-55)

と位置づけてみたり、宇宙人解剖フィルムを

灰色のエイリアンの姿そのものが、死者の書き言葉として拡大したエイリアン神話を象徴しています。
そして、もともと死んでいたエイリアンの新たな死を表象するフィルムが、
エイリアン神話の死を期することとなりました。(p.140)

とか言われても、「そうか?」というのが正直な感想。


タイトルに「ポストモダン」と付いていることから分かるように、その筋の人達がよく使う「権威を借りてきて、それを拾ってきた現象に当てはめて」というものなので、まあ、分析とかはあまり面白くはない。


それとは別にしても、議論も少々おかしい。(科学や技術に関する知見の低さはとりあえずおいておくことにする。「そうれは本当はどうなのか?」ではなく「それを大衆がどう思ったか?」が主眼であるから。勿論、議論の質を低下させているのは事実であるが。)

なにより、第1,第2の時代については、名著「人類はなぜUFOと遭遇するのか*1」から引いた米国事情なのに、一番新しい「ポストUFO神話」のところが、いきなり米国ではなく日本の話になっている(しかもかなり未整理というか強引)。ここで米国の話を持ってこなくては話がまとまらない。あるいは、最初から日本のUFO事情の話でまとめてこなくてはならないはず。

ちなみになんでそうなったのかは予想がつく。
後書きで著者自身が、本書のアイディアを「人類はなぜUFOと遭遇するのか」と、その解説として瀬名秀明氏が書いた「環境ホルモンが現代の神話かもしれない」という記述とであることを明らかにしている。
つまりは、それを引っ張ってきてポストモダン屋さんの文章に書き直しただけであるのだ。


ということで、あまりお薦めしません。「人類は……」を読む方が遙かに有用でしょう。(ポストモダン屋さんならこっちが先でもいいかも。)


でも、所々面白い記述はあるので、そういう点から読むのはあり。
例えば、環境ホルモンマイナスイオンを表裏の関係にあると読むのは、なるほどと思った。(但し、マイナスイオンが日本限定であることから、本書の主要な議論においては、位置づけがおかしくはある。)

*1:

人類はなぜUFOと遭遇するのか (文春文庫)

人類はなぜUFOと遭遇するのか (文春文庫)