k-takahashi's blog

個人雑記用

運転

 自動車雑誌NAVIの連載(99年8月号〜02年6月号)をまとえた単行本が文庫化された。それが本書。

 車以外の乗り物はどうなっているのか興味が湧いた。 誰が、どんな風に運転しているのか、果たして人間がどこまで運転しているのか、いないのか。(文庫版後書き、より)

 この視点があるので、「楽しいですか。どんなところが面白いですか?」という質問が、何度も出てくる。(潜水艦の運転が楽しいと聞いて妙に喜んでいたりする。)


 割ととんでもないものまで「運転」している。スキージャンプや馬、保津川下り、熱気球、車いすレーサー、そしてアシモ。ほとんどが「職業」としての運転であり、求められているものもわかりやすく説明してくれる。
 「胃カメラ」では、どうやって操作するとか、どのくらい難しいとかいうのも面白いが、こんな表現が出てくる。

 でも、アルファロメオ好きの内視鏡医よりも、患者は安心できるかもしれない。


 電車関係も色々出てくる。地下鉄は地上電車よりも起伏が激しいとか、路面電車は自動制御できないので楽しそうとか、最後にはリニアの運転なんかも出てくる。リニアは動力も制御も車外にあるから、運転も車外で行うのが合理的となるのだそうだ。それでも

 新しい試験項目をやるときには、手に汗を握るほどではないにしても、緊張感はあります。何キロ地点をこのスピードで通過したい。そのためには何Gで加速するのか、何アンペアの電流を流すのか、そのパターンをいかにうまく作って入力するかというのが、これまで運転士がマスコンとブレーキでやっていた"ワザ"に相当するんでしょうね。(p.312)

という証言を聞き出すあたり、楽しみへのこだわりが感じられて好印象。


 アシモについては、思ったより「運転」しやすいという感想を持った筆者に対して、開発者が自立運動生成ができるようになったので操作がシンプルになったと説明するシーンがある。筆者は「考えるラジコン」という言い方をしているが、ここばかりは筆者も操作しやすくなったことを単純に喜んでいるのが面白い。他の件では、操作が自動化されるのをいやがる場面が多いのに。やはり先入観さえ無ければ、思った通りに動かし易いのが正しいのだろう。