k-takahashi's blog

個人雑記用

自民党改造プロジェクト650日

自民党改造プロジェクト650日

自民党改造プロジェクト650日

 世耕氏がこの本を書くときに想定したと思われる読者層はおそらく3つあると思う。
一つは、自民党そのもの。党員ではなく、議員や職員というコア部分の人達。この人達に対して、2年間かけてやってきたことを忘れないように、まだやり残していることがあるからそれもやっていこう、ということを訴える。
二つは、自民党改革を支持している人達(自民党支持層とは微妙にずれる)。この人達に対して、2年間かけて何をやってきたか、何が残っているかを説明する。
三つは、自民党外で改革の必要性を感じている人達。はっきり言ってしまえば、民主党の有志の人達。この人達に対して、自民党はこういう風に改革をしてきた。あなた方も、しっかりおやりなさいとエールを送る。


 帯には「自民党はなぜ変わったのか」と書かれているが、この理由は簡単である。「選挙に勝つため」である。
そのために何をしたか、何が問題だったか、なぜそれを解決できたのか、何が残っているのか、そういったことが分かり易く書かれている。この「分かり易く」というところが重要で、多少の省略や誇張があるにせよ、これだけ分かり易く書かれたら、もう「知りませんでした」では通らない。(そもそも、この本を代議士が書いていること自体がおかしい。こういうのをきちんと書いてこそのジャーナリストのはず。)


 それにしても、改革の進まないこと。何をやってもすぐに障害が出てくる。うまく進めてもまた障害。ちょっと進むとすぐ後戻り。その苦労は郵政選挙で実を結ぶ(この勝利は決して偶然ではないし、小泉氏一人の功績でもない。しかしながら、小泉氏が党内改革を進めていたからこそ可能になった)。
が、世耕氏によれば、これで勝ったせいでまた改革が遅れているとか。
まあ、そんなものだと言われればその通りだし、改革で失われた残すべきものもあるはずだというのも一理はあるけどね。


 世耕氏はある意味常識人なので、表だったマスコミ批判はしていない。しかし、おかしなことはきちんと指摘する(あくまでも事実を知ってください、というアプローチをとる。意図的と思えるセット配置があった場合は改善を求める。)し、自民党側の要求はきちんと伝える、ということはやっている。もっとも、こういう対応すらしばしば滞ってしまうところが問題の根深さを示している。
一方で、旧態依然たるマスコミを実は世耕氏は嘲笑しているのかもしれない。
マニフェスト批判の部分も、実はマスコミ批判と考えるべきなのかも。


 あと、ちょっと本題とずれるが、本書で所々顔を出す森喜朗氏が良い働きをしている。例の「干からびたチーズ」も計算ずくの演出だったらしいし、侮れませんな>森氏


 もう一つ、56ページに、世耕氏が小泉さんに出したレポートが載っている。A4で1ページのこのレポートは実に見事なもので、自分が出すレポートもこうありたいものだ。
(世耕氏は、公募候補向けに選挙サポートのためのレポートも出していたそうだ。この辺からみるに、ビジネスマンとしても優秀だったんでしょうね。)