k-takahashi's blog

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贈る物語Terror

贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き (光文社文庫)

贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き (光文社文庫)

 宮部みゆきの編集によるホラーアンソロジー

もし今このページを御覧の皆さんが、ホラーやサスペンス小説のファンであるならば、目次を一瞥しただけで
「あれ? なんか有名な作品ばっかり並んでるじゃん」
と思っていることでしょう。(p.11)

と書いてあるように、あまり極端なセレクションはされていない。ただ、宮部氏によれば、そういうものでも結構手に入りにくいことと、ともかく第一歩を踏み入れて貰って楽しさを判って欲しいこと、という思いが込められているとのこと。


 実際、初心者とかにもお勧めできる作品が多い。とはいえ、やはり選者の嗜好は入るよな、とも思ったけど。


 個人的には「オレンジは苦悩、ブルーは狂気」(デイヴィッド・マレル)と「淋しい場所」(オーガスト・ダーレス)が気に入った、というか怖かったというか。

 「オレンジ…」はファン・ドールという架空の画家を扱っているが、画家本人も、後世の研究者達も自殺してしまったという曰く付きの画家。実はこの画家の描いた絵には秘密があり、その謎を追っていった主人公の友人は、と展開していく。で、この短編を読んだのが金曜日の帰宅中の電車の中。土曜日はオルセー展見学だったわけですよ。いやはや、変なものが見えたらどうしようかと。
 描かれた絵の謎が解けるのが前半で、絵には秘密があったわけですが、それだけでは後世の研究者が死んだ理由が分からない。その謎が後半になって解かれていく。真実を追い求めた結果の破滅というのはホラーの定番ですが、旨い一作でした。

 「淋しい場所」は、あのダーレスの小品。子供の頃感じていた恐怖感が実は、という話なのですが、これも自分が子供の頃に感じていた今となっては理解しがたい恐怖感を描写している。こちらは、懐かしさ半分、怖さ半分。


 「猿の手」といった定番も入っているのでお薦めの一冊です。