k-takahashi's blog

個人雑記用

数学で犯罪を解決する

数学で犯罪を解決する

数学で犯罪を解決する

 日本ではFOXで放映中のNumbersというテレビドラマがある。FBIの捜査官と数学教授の兄弟が協力して犯罪捜査にあたるというストーリーで、現在第5シーズンが放映中。これだけ続くと言うことは人気があるということでアメリカでは数学に教材に流用されることもあるらしい。
 そのNumbersで使われている数学について、突っ込んで解説した一冊。


 ドラマ的な演出は当然あるものの、背景にある数学そのものについてはきちんと専門家のチェックを得た「本物」だとのこと。幾つかのエピソードについては実際の捜査をアレンジしたセミノンフィクション的なものですらある。


 それなりに突っ込んで解説してあるとは言え、やはり本書は「テレビ番組を見て興味を持った人」向けの本なので、科学書を読み慣れた人にとってはちょっと食い足りないかもな、と思った。(しかも、今週のFOXジャパンの放映分は、本書で「ハズレエピソード」扱いされている回だし。タイミング悪かったかも)。単独の本としては普通のでき。番組を見ている人ならお薦め。


 面白かった話題を2つほど。

 一つは、指紋鑑定の話。DNA鑑定の正確性・正当性についてはよく議論の的になるし、本書でも扱っている(例のめぐみさん関係でDNA鑑定が捏造だと騒いでいる人がいましたが、要するに分かってない人が多いということ)。ところが、指紋については、そのような意味での正確性・正当性の評価がなされていないという指摘があった。きれいな指紋どうしを比較するなら同じかどうかは判断できるが、実際の捜査では汚れがあったり、部分的であったりする。その時、「一致した」というのはどの程度正確なのか、という議論である。言われてみればその通り。

 もう一つは、陪審員選択の話。自分達に不利と思われる陪審員を拒否すると、偏向と批判されることになるが、それとばれないように自分達に不利と思われる特定の人達を排除することは可能だろうか。なんと、これは1970年代にすでに試されており、反戦活動家の裁判で弁護団が「活動家に同情的でない」と思われる人達をごっそりと排除し、好ましい判決を得ることに成功していたのだそうだ。