k-takahashi's blog

個人雑記用

ロボットのおへそ

ロボットのおへそ (丸善ライブラリー)

ロボットのおへそ (丸善ライブラリー)

 国立情報学研究所の稲邑哲也先生の研究を紹介する一冊。社会的知能発生学研究会が縁で知り合ったという瀬名秀明氏との対談が半分。残りの半分は普通の解説記事。


 対談部分では、一般の人達と研究者とのギャップの話が出てきます。一般の人達が期待するものと、研究者が実現・目標としているものとのズレの問題は、特にロボット実用化を考えると重大なのですが、ここでは、学生とのギャップに触れているのが面白かった。テレビでASIMOをみてきていて、ホビー用ロボットも簡単に手に入る。そういう時代に育ってきた学生に「ロボット研究って?」という感覚があるのだそうです。


 研究紹介の部分は、「ミラーニューロン」「ミメシス仮説」「原始シンボル空間」という3つのキーワードで説明される。
ミラーニューロンは、他者の行動を「見た」ときに自分がその動作をしたのと同じように反応する脳の部分。ここで、他者の行動を自分の知っている行動にマッピングしていることになる。
ミメシス仮説は、言語の発生以前に概念だけを使ったコミュニケーションがあったという説。
原始シンボルは、動作の時間的な変化を抽象化した数式群の中から、なんらかの記号を構成できる要素をまとめたもの。稲邑先生の研究では、ミメシスを実現する手段と位置づけられている。
 例えば「歩く」とか「走る」とか「蹴る」とかいう原始シンボルを設定したとする。その具体的パラメータはパラメータ群として学習させるのだが、逆に「歩く」という原始シンボルからは歩くという動作を生成できることになる。(ミラーニューロンと同じ考え方) ここで、「小走り」を見せるとロボットは「歩く」と「走る」の両方に近く、かつその中間的なものだと理解する。生成も同様。


 インタフェースや道具としてのロボットの位置づけには、あまりピンとくるものはなかったのだが、原始シンボル空間とかシンボル操作とかの考え方は面白かった。