k-takahashi's blog

個人雑記用

コマンド 90号

コマンドマガジン Vol.90(ゲーム付)『ソロモンズ・キャンペーン』

コマンドマガジン Vol.90(ゲーム付)『ソロモンズ・キャンペーン』

 付録ゲームは「ソロモンズ・キャンペーン」。J・F・ダニガンが1970年代にデザインした陸海空を統合したゲーム。全16ターンで各ターンは5つのフェイズから構成される。それぞれのフェイズは複数のセグメントから構成されており、その組み合わせはそれぞれ異なる。プレイの手順のところ([4.0])を見ると思わずため息が漏れる。
 一方で、このゲームは複雑なシステムの割にプレイ時間が短い。SPI社内のテストプレイでは(慣れたプレイヤー同士とは言え)、セットアップから16ターン終了までが平均で3時間以内だったそうだ。


 記事中には、歴史記事も同テーマのゲームのシステム紹介もあるが、できれば、本ゲームの影響を強く受け、かつ日本での知名度が高い「太平洋艦隊」に言及する記事も欲しかった。


 歴史記事の中に、大木毅氏の「1943年の敗戦」という記事があった。H.P.ウィルモットというグリニッジ大学の特任研究員を務める研究者の近著の紹介で、「1943年2月から10月が太平洋戦争の重要な転換期だった」という論を紹介している。なぜ、米国がこの時期にガダルカナルを狙ったのか(政治的理由が主であった。日本軍が米軍の本格的反抗をもっとあとだと判断していたのも、それなりに合理的だったとしている。)、日本軍はどのように戦うつもりだったか(米軍の反撃に対して、艦隊と基地航空機によって対応し、米軍を消耗させる。)、それがなぜ失敗したのか(ヘンダーソンを失ったから)、などを解いている。
 ゲームデザイン的に面白いと思ったのは、ウィルモット氏の論を大木氏が以下のように解説する部分。

1943年1月以前までは、日米ともに「戦前艦隊」つまり、開戦前に造られた艦船によって戦っていた。が、日本が、1943年2月以降も、本質的には従前通りの古い艦隊に頼らざるを得なかったのに対して、アメリカは、まったく新しい艦隊を作り上げてしまったのである、と。ゆえに、この時期にこそ、目を惹くような大戦闘がなかったにもかかわらず、太平洋戦争の勝敗は定められた。
 最後に、ウィルモットの、ラディカルな評言を引用しておこう。
「勝敗の決定という意味からすれば、1943年11月に、太平洋戦争は終わったと論じることも可能である。」
 多くの、太平洋戦争をテーマとしたゲームが、1943年末以降をどう表現するかについて苦戦している現状に鑑みて、示唆に富む指摘であると、筆者には思われる。(p.35)