k-takahashi's blog

個人雑記用

はやぶさ物語

小惑星探査機 はやぶさ物語 (生活人新書)

小惑星探査機 はやぶさ物語 (生活人新書)

 こちらは、的川先生によるエッセイ。当事者のひとりとしての肉声が興味深い。
チームを見守る的川先生の視点が伺える部分とか。

もう一回降下をするとなったとき、川口プロジェクトマネージャーが「非公開にしたい」と言いました。非公開にすると、あとで何を言われるか分かりませんが、色々なことを試してみたかったのです。「一回一回質問されると、それで時間を取られるので、ちょっと勘弁して欲しい、秘密でやるから」というわけです。
わたしも、「秘密ねぇ、これがばれるとあとでいろいろといわれるよ」とは言ったのですが、親心で「そうだよな、やれよ」と思って非公開でやりました。(p.97)

燃え上がったような「はやぶさ」の本体が、ばらばらになりながら消えていく様子は、さすがに「はやぶさ」チームの人間にとっては見たくないという感じでした。自分たちが苦労してともに仕事を続けてきたものが消えていくというのは、どうにも耐えきれない思いだったようです。
(中略)
この三人は「ごくろうさん」と最後にみんなから花束をもらったあと、惚けてしまったようです。そのうちの一人に宇宙科学研究所の廊下を歩いているときに会って「どうしたんだ」と聞いても、彼はぼーっとしていました。(pp.161-162)


チームの成長を喜ぶ様子も。

これから日本の惑星探査はいろいろな天体を目指すと思いますが、わたしは、あと二十年近くは働き続ける日本の惑星探査の主力チームができたなという感じをこのときに受けました。(p.123)


広報を続け、時代を育てるという視点からの言葉も。

地球環境の危機ばかり教え込んで、その解決方法を示さないのでは、危ない危ないと言うことしか分からない人間になってしまうでしょう。それより「世間知らず」の大胆な子どもを育てる方がいいんじゃないですか、という感じがわたしにはわりと強くあります。これには反対する人は多いのですが。(p.190)

アメリカで環境教育をしている人も同じようなことを言っていた。自然が好きになる前に、環境危機を教え込むと無気力な人間に育ちがちだとか。