k-takahashi's blog

個人雑記用

はやぶさの奇跡

小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡

小惑星探査機「はやぶさ」の奇跡

内容的には、上記の「はやぶさ物語」にだいぶかぶるところがあるが、本書は図表が豊富。分量的には「物語」の方が多いので、色々と微妙。いっそ一冊にまとめてくれた方がよかったなあ、とも。


 重なっていない、と思う部分を幾つか。

まずいことに、当時情報収集衛星(つまりスパイ衛星)打ち上げのための漁業者との折衝が控えていた。漁業交渉の窓口は科学技術庁である。
国策として打ち上げる情報収集衛星と科学目的の「はやぶさ」 勝負は明らかである。科学技術庁としては「はやぶさはまあ措いても、情報収集衛星を打ち上げさせて下さい」ということになるのは、明らかだった。
私はもう10年以上、この漁業交渉の席に連なってきていた。漁業者との仲は非常に良好である。私はルールを無視して「お忍び」の単独行動に出た。
五つの県漁連を巡ること2週間。今考えても気が遠くなるほどお酒を飲みまくった。そしてすべての県漁連から「日本の科学のためだ。正式の交渉では先生に恥はかかせないから」という確かな了解をもらって、密かに東京に凱旋した。
そしてそれが科学技術庁に「ばれた」のである。(p.34)

はやぶさ」は、その「ニア・シューメーカー」の快挙を継いで、初めて小惑星の表面からの離脱を達成したわけである。それでも川口淳一郎にとっては喜べない「世界初」であった。
しっかりとした意図を持ち、予定したプログラムに沿って達成した「業」でなければ、継ぎに本格的にサンプル採取に挑戦するための「工学実験機」としての意味をなさない。「偶然の世界記録」に浮かれてはいけない。事の本質をわきまえ、未来に繋がる技術を極めようとする真のエンジニア魂である。(p.85)