未来型サバイバル音楽論―USTREAM、twitterは何を変えたのか (中公新書ラクレ)
- 作者: 津田大介,牧村憲一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/11
- メディア: 単行本
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ドーピング
相当な踏み絵だなとも。どういうことかというと、今まで音楽に関わりたくてもプロのミュージシャンにはなれなかった人が、音楽制作への渇望から、ニコニコ動画で初音ミクのオリジナル曲を作って公開する。それがものすごくヒットして、いわゆるプロデューサー、「P」と呼ばれて人気者になるという、ある種のサクセスストーリーがネットでは起きている
(中略)
ボーカロイドのプロデューサーとしては売れているので、初音ミクという、ボーカロイド現象の中の一員、one of them として参加することはできる。しかし、あくまでもそれはミュージシャンとしての自我が100%認められているわけではない。そこのギャップ、つまりクリエイターとしてのアイデンティティで悩んでいるミュージシャンは少なくないです。
(中略)
重要なのは、何を目標としているかということです。自分の曲を広めたいのであれば、僕は別に初音ミクを利用しても良いと思う。あくまで組んだミュージシャン、組んだボーカリストと一緒に作りたい、この人が歌う曲として広めたいんだという気持ちを最優先したいなら、そこに向かうルートとして、初音ミクを選択することは、手段としてはいいでしょう。ただ、その分遠回りになってしまうかもしれない、そこは覚悟する必要があります。(pp.45-47)
マンガでも小説でも、ゲームでも同じようなことはあるなあ、と。その意味で、本書で書かれている一人一レーベル(p.106)やファンクラブビジネス(p.124)というのは、別に音楽に限らない話だと思う。
手段
副題にustreamだのtwitterだのと入っているけれど、そっちはあくまでも手段というか環境の一部として捉えればよいのであって、やはりweb論として読んだ方が参考になると思う。
CD化とかレンタルビジネスとか、カラオケ対応とかタイアップとか、色々なことがここ30年の間に起きていて、音楽産業はマネタイズという観点からもそれなりに対応をしてきた。なのに、なんでWeb化にはうまく対応できなかったんだろうな、というのが読み終えて残った疑問。
契約形態の問題が変な形で足を引っ張ったのかなとも思うが、だとすると今出版社が電子出版対応で契約形態を色々いじくろうとしているのに注意しないといけない。原盤権みたいなものを出版社に持たせるような契約は、マイナスに作用するのではないだろうか。