k-takahashi's blog

個人雑記用

軍事研究 2011年02月号

軍事研究 2011年 03月号 [雑誌]

軍事研究 2011年 03月号 [雑誌]

特集は「ゼロ年代兵器」。この10年での戦争の変化を兵器の観点からまとめたもので、各国の開発や調達にも関わる話。自衛隊あり、米軍あり、ロシアあり。陸海空も様々。全く新規の話というわけではないが、良い特集だと思う。単行本にまとめても良いのではないだろうか。


谷哲也氏は自衛隊について書いており、ゲリコマ・テロ対策が進んだことにまず触れている。装備もさりながら、環境や対応の違い(民間人によるレクチャー、トイガンの訓練への導入など)も。
イラク派遣の際に自衛隊が持ち込んだ軽装甲機動車がMRAPの先駆け的だったとか、民生品活用とかは、若干褒めすぎかもしれないけれど良い視点だと思う。


陸戦兵器についての山野治夫氏の記事に「戦車のメルカバ化」という言葉があってうまいと思った。


連載中の「警察予備隊裏面史」(坂梨靖彦)は、当時の調達を巡る暗闘が描かれていた。時代的なこともあるのだろうけれど、接待・過剰反応・脅迫・政治圧力・投書などなど、大変だったようだ。中国やロシアで起きている混乱というのも、これに似たものがあるのだろうか。


「武器輸出三原則と国際共同開発」(林富士夫)は、題目の話が出たことに対して、もう少し広い視点からの検討を提言する記事。防衛産業の危機という視点が無いこと、実務的視点がないこと、を大綱見直しの議論に欠けていた点と指摘している。
防衛産業基盤の維持や輸出管理は先進国ならどこもきちんと考えていることで、ことさらに日本の特異性を考えるよりも、世界標準的なものを見ることが有用だろうというのは同感。
世界の趨勢についての説明が興味深く、例えば米軍の取得優先順位というのは以下のように決まっているそうだ。

任務に対する能力城の欠落是正のためにまず取り組みのは、運用要領の変更、規則の変更、組織改編など計一時間がかからない方法(Non-Material Approach)である。それでは解決不可能となって初めて装備品による対策(Material Approach)に移る。しかし、そこですぐに開発に取りかかるわけではない。まずは、現有装備の改善でどうか、直接購入(外国製品、民生品を含む)ではどうか、など経費時間の少ない方策から検討し、開発は最後の手段となる。
開発にも優先順位がある。経費と効率を考慮して、(1)外国との経費分担ができる「国際共同開発」、(2)陸海空軍海兵隊二軍種以上による「統合開発」、(3)各軍による「単軍種開発」 の優先順位を決めており、国際共同開発はトッププライオリティである。(pp.209-210)

輸出管理についても、欧州にはEU8原則、米国にはITARというのがある。これらの原則と日本の武器輸出管理にきちんと整合性をとって運用すれば、現在のような使いづらい規則としてではなく、実効性を高めることができることも示されている。
今の政府にきちんとした対応を期待するのは難しいだろうが、直すならきちんとやりたいですね。