もうひとつ、わけが分からなかった記事がこちら。
知事は「副反応事故が起きるたびにメディアが大きく捉え、元気な子どもが死んじゃったんだ、と非常にエモーショナルに伝えることで裁判になったり、国が負けたりして、危ないことはやめておこうという歴史があった」と説明。その上で「1人が亡くなった時に何人に打って事故が起きたかという分母が日本では分からない。それで海外のワクチンの多くが日本で使われていない。診療情報をオープンにし、分母が分かるよう透明性を高めなければ乗り越えていけない問題だ」と指摘した。
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1306130035/
さらに「最近も新しく子宮頸(けい)がんワクチンをやってみたら、副反応事故が起きた、さあどうすると右往左往する今までの歴史が繰り返されようとしている」とも述べ、ワクチンに対する認識を共有する重要性も強調した。
きちんと情報公開しようということで、別におかしなことは言っていないと思うのだが、なぜか記事はこのあと
議場がざわつく場面もあった。
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1306130035/
と、よく分からない文を続けている。(そもそも記事のタイトルが「知事 ワクチン副反応で持論、発言に議場ざわつく」なんだが)
前後の文脈かなにかあるのかと思ってちょっとネットを探してみたところ、残念ながら議事録はまだあがっていなかったがこんなニュースが見つかった。
黒岩祐治知事は13日、県の予防接種施策として、医師や感染症の患者団体など現場の当事者が参加し、予防接種について自由に討議する研究会を7月に立ち上げることを明らかにした。
http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1306130023/
(中略)
米国にはワクチン接種について政府機関代表者と専門家らが協議し政府に提言する諮問委員会(ACIP)があり、黒岩知事は研究会を「神奈川版ACIP」と位置付け「神奈川から今後の予防接種のあり方を発信していきたい」と述べた。
同じ日の同じ人の発言で、一連の発言としか思えないのだが、なぜか「関連記事」のリンクが張られていない。
ACIPの日本版については、
昨日(4月22日),東京都で第1回厚生科学審議会・ワクチン分科会(分科会長:岡部信彦氏・川崎市健康安全研究所長,関連記事)が開かれた。今月1日から施行された予防接種法改正法にのっとり,予防接種の総合的かつ計画的な推進を図る「予防接種基本計画案」を今年末までに策定する予定。初回の分科会では米国の予防接種諮問委員会(ACIP)で実施されている「参考人の招致」「傍聴者からの意見聴取」の導入が提案,了承された。
医療・医学ニュースサイト メディカルトリビューン | Medical Tribune
とあり、別に突出した主張というわけでもない。
(ちなみに、ACIPはパンデミックでも知られるCDC(米疾病予防管理センター)内の機関)
岩田健太郎先生は、集団へのワクチン投与により“群れの免疫”を獲得するのであるから、その副作用に対しては集団が無過失補償を提供するべき、という趣旨の発言をされている。費用対効果が悪かったり、過剰な副作用が疑われたりしたら、集団接種は取りやめられる。これは米国の方針でもあって、ACIPも同様のはず。ここも別に変な話ではない。
ということで、あの記事の「ざわつく」の意味が分からない。
ひとつの可能性として、反ワクチン主義の記者が書いた偏向記事というのが考えられるが、記事が無記名なのでこれも分からない。
なお、今日、厚生労働省の検討部会が子宮頸がんワクチンの勧奨中止を決めたが、
接種後に慢性的な痛みが生じる重い副作用の疑いが38例報告された。この症状とワクチンとの因果関係は分かっていないが、検討部会では情報が集まり因果関係の有無が確認されるまで、ワクチンの勧奨を一時やめるとの意見が多数を占めた。
子宮頸がんワクチン勧奨中止へ 厚労省、副作用で :日本経済新聞
ということで、上記の話と別に齟齬はない。
なんなんだろう?
(というか、なんで最初の記事に「どこでざわついたか」が書かれてないんだ?)