本当はこんなに面白い「おくのほそ道」 (じっぴコンパクト新書)
- 作者: 安田登
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2014/01/11
- メディア: 新書
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怪物と戦う代わりに、詩人の魂と交流をし、怨霊を鎮魂し、四季の景色を愛でて、名所を一見する(p.12)
『おくのほそ道』にも使命があった。
それは、怨霊化しようとする源義経の霊魂を慰めることであった。義経の例を鎮魂し、その怨霊化をくいとめる。それが芭蕉に与えられたミッションである。もし、芭蕉がそのミッションに失敗したら…
(p.13)
TRPGのもっともマニアックなやりかたは、コスプレをしながらすることだ。王の役割の人は王様の恰好をし、戦士は武具を身につける。
芭蕉は『おくのほそ道』の旅をするときに、この西行のコスプレをした。
(p.14)
と、こう並べると、紀行もののRPGのようにも見えてくる。加えて、著者はおくのほそ道の前半部を4つのパートに分割し、「深川〜日光」を導入部、「日光〜白河」をエネルギー準備部、「白河〜飯塚」をアイテム収集部、「飯塚〜平泉」をラスボスステージ、と見立てている。
これは、確かに面白い見方。名勝地の由来を能を使って説明し、芭蕉がそこに行く理由はパワーアイテムを集めるため。で、最後に鎮魂の儀式として「夏草や 兵どもが 夢の跡」を詠む、となる。ローズ・トゥ・ローズ*1とかのシステムとの相性は良さそうで、実際のシナリオ化もあながち無理ではなさそうだ。
著者は能楽師でもある。江戸期の文化人(芭蕉一門)は当然能についても充分な知識を持っていたはずで、それを踏まえて、おくの細道の各エピソードと能との関連を説明し、それをRPG風に説明しているというようなかんじになっている。
解釈の妥当性については、浅学な私にはなんとも分からないのだけれど、読んでいて面白いのは事実。おくのほそ道と能とゲームという、毛色の違ったものを結びつけることから出てくる面白さは、『シンデレラは、なぜカボチャの馬車に乗ったのか?』*2に通じるところがあるのだと思う。
ただ、おくのほそ道の説明と、能との関わりの説明と、ゲーム的解釈の攻略本的説明といったあたりを行き来しつつなので、ちょっと散漫な印象も受けた。もっと思い切ってゲーム側に寄せた方が、詠みやすくなったのではないかなと思う。
紀行ものをRPGとして解釈するということなら、それほど突飛ではない(『大唐西域記』とか、ゲームシナリオ化(?)して『西遊記』になった)けれど、日本の超有名古典文学というのは面白いなと思った。『土佐日記』とかできるかな?
*1: ローズ・トゥ・ロード (ログインテーブルトークRPGシリーズ)
*2: シンデレラは、なぜカボチャの馬車に乗ったのか ~言葉の魔法~