k-takahashi's blog

個人雑記用

ゲームはこうしてできている 〜学生向けのゲーム業界解説書

著者の岸本好弘氏は、ナムコファミスタを作り、その後コーエーを経て、現在は東京工科大の特任准教授として学生を教える立場にある。その岸本氏が、主に学生(高校生〜大学生)を想定してゲーム業界の仕事について解説した一冊。本当に一冊目を想定して書いたようで、ゲーム製作の仕事の中身だけでなく、ビジネスについての入門書にもなっている。
(なので、産業論的なこともちょっとだけ書かれている)


特に学生さんに分かりにくい「プロデューサー」と「ディレクター」の違いは、割と強調されて何度も書いてある。

プロデューサーは、ビジネスモデルやビジネス展開を考えるのが仕事(p.78)

なので、宣伝やタイアップなんかもプロデューサーの仕事となる。

一方、ディレクターはと言うと、

ディレクターは、この時期、次の3つの作業を行います。
企画書の作成
予算書の作成
開発戦略会議のプレゼン
(p.92)

進捗管理
品質管理
他部署への依頼
(p.93)

なので、

製品にバグが残っていた場合の責任はプロデューサーではなくディレクターにあるのです。
(中略)
ゲームが売れなかった場合の責任はプロデュサーにありますが、ゲームのクォリティに関してはディレクターの責任となります。
(p.94)

笑った例え話があったので引用。

プロデューサーは織田信長でディレクターは明智光秀とみなしてもいいでしょう。ただし、信長・光秀のプロジェクトは最後に失敗してしまいます。無茶を言うプロデューサー信長にディレクター光秀がキレて、信長を殺してしまうからです。この失敗例は、プロデューサーはディレクターにあまり無茶を言ってはいけないという教訓を物語っています。(p.97)


企画書の書き方やアイディアの出し方についても、内容自体はよくビジネス書に書いてあるものだけれど、学生向けに分かりやすく書いている。
特に第4章の「ペラ企画を書こう」のところは、普通のビジネス書的な視点でも結構参考になると思う。ペラ企画は1枚の企画書で、毎年CEDECでイベントが開催されている。ゲームネタで、過去のペラ企画が公開されていることもあり、これは上手い説明だと思った。


とは言え、やはりターゲットは学生さんですね。普通のビジネスマンだと、岸本さんのエピソードを楽しく読むといった辺りの読み方になると思う。