k-takahashi's blog

個人雑記用

数学文章作法 推敲編

読み返す、書き直す。
当たり前だから難しい。
(帯、より)

理屈では分かっていても実行が難しいことは色々ある。推敲もその一つ。
それで、とにかく具体的に「何をどうするか」をまとめた一冊。学生の皆さんは、必ず読みましょう。


最後のまとめとなる章には、

「自分専用のチェックリスト」を作ることをお勧めします。(p.180)

今後は、この辺もAI搭載の推敲支援システムがやってくれるようになるけれど、今は自分でやらないといけない。


興味深かったのは第8章の「推敲を終えるとき」。
推敲を終えたい心理、終えたくない心理、を説明した上で、

  • 読むときの「引っかかり」がなくなってきたとき
  • 「修正してから戻す」ことが多くなってきたとき
  • 加筆したい項目が、テーマからずれていることが多くなってきたとき

という3つのポイントをあげている。なかでも二つ目の「一旦直して戻す」というのは確かにそうだなと思った。三番目のは、「別の文章で書け」ということだし。


ただ、たいていの場合は「締め切り」というのがある。学生ならレポートや論文の締め切り。社会人なら当然日程がある。論文でも同じ。同人作家のみなさんなら入稿締め切り。この「締め切り」との付き合い方も難しくて大事。結城先生がご自身の著書を書かれるのであれば、締め切りもかなりの程度自分で決められる(これはこれで厳しい話ではある)が、一般には締め切りは外部から与えられる制約になる。

人にもよるだろうけれど、私は(全責任を自分が被れる同人誌はともかく)、穴を開けないために「半完成品だけれど」といって編集の人に渡しておくことがある。編集の人からしたら、原稿の質もさることながら、原稿がこない(落ちる)ことは本当に困る。

もちろん、途中版がそのまま載せられてしまうリスクはある(そういうこともあった)けれど、逆に裏の締め切りや真の締め切りや本当の締め切りを教えて貰えて助かったこともある。(大きく直したくなったときに、時間が足りるかどうかということになるよね)


あとは、提出後にどうしても直したくなることがあるが、それをどうするか。
自主締め切りを少し前に切っておいて、そこで一旦締める。これは自分に対して「ここで締め切り。もう直さない」と言い切る必要があり、可能な限り守る。多少直したくなっても我慢する。
でも本当に直したくなったら(たまにある)直す。


実際的なアドバイスとして、なるほどと思ったのが以下の部分。

いま述べた「なんとなく書いた言葉」は、執筆をしている途中では潤滑油の役目を果たす場合があります。具体的には「〜ということ」「〜のような」「〜といった感じ」「〜といえないこともない」などの表現のことです。このような表現を使うと「断言する際の心理的負担」を減らすことができ、文章を書き進めるのが楽になります。一旦文章を書き上げておき、推敲の段階で「なんとなく書いた言葉」を削除していくのは、執筆を楽に進めるコツの一つです。(p.43)