k-takahashi's blog

個人雑記用

クラウゼヴィッツ『戦争論』

こちらは、クラウゼヴィッツに絞った解説書。「60分で名著快読」というシリーズだが、さすがに60分で読むのはちょっと大変。
戦争論』の書かれた経緯、歴史的位置づけ、読みにくい理由、などから始まり、『戦争論』に書かれている順番で内容を解説、歴史的に『戦争論』がどのように受け取られてきたか(本書では、それは誤解の歴史だ、的な見方をしている)、そして現在の評価、となる。


本書は、『戦争論』のポイントを「クラウゼヴィッツが修正を試みた二つのポイントを押さえればよい」(p.51)と捕らえる。その二つとは以下の部分。

第一に、「絶対的戦争」は的の完全な打倒を目的とする現実には起こりえない概念上の戦争であり、これに対比される「現実の践祚」は、現実におけるさまざまな要因によってかならず何らかの制限を受けた戦争であるという視点である。
この「絶対的戦争」と「現実の戦争」の力点の置き方は、各編や章によって偏りがあるが、この視点に注意しながら読めば『戦争論』の論理の展開がよくわかるはずである。
第二に、「戦争は政策の継続に過ぎない」という視点である。
(pp.51-52)

これを理解せずにいた人が多かったという歴史も語られている。


なお、本書は文庫だがもとになった本は2004年発行なので、上述の『名著で…』よりも前になる。そして、本書が語る「クラウゼヴィッツルネッサンス」に対する批判も『名著で…』には書かれている。(本人の思想というよりは、後代の解釈が出ているのではないか、というもの)
本書も、これで『戦争論』を読んだつもりになると間違いだと思うが、難しいことで知られる本なので、まずはこれでというのはよいと思う。


2冊とも、これだけを読むなら文庫1冊ずつなので、それほど苦労せずに読める。
軍事戦略とか戦争論とかに興味があるなら、お勧め。