k-takahashi's blog

個人雑記用

防衛政策の70年 〜何を課題として何をしてきた(しなかった)か

自衛隊史: 防衛政策の七〇年 (ちくま新書)

自衛隊史: 防衛政策の七〇年 (ちくま新書)

そもそも国防軍ではなく、なぜ「自衛隊」なのか。平和憲法の下で軍隊としか思えない自衛隊のような組織が作られたのはなぜなのか。自衛隊は他国の軍隊とどのように違うのだろうか。日本の防衛について、自衛隊はどのような役割を果たすのだろうか。こういった問題を、本書は歴史的経緯を追いながら検証していくことを課題としている。(No.84)


少し前に『国産護衛艦建造の歩み』という本を読んだときに、海上自衛隊の艦船がどのような方針で整備されていったかを解説していて、「これの陸自版、空自版が欲しいな」と思った。
本書は『歩み』ほど突っ込んだ解説ではないが、三自衛隊と政府・官僚の狙いや世論同行なども含めて歴史的な流れを概説してくれている。あと『歩み』はほぼ昭和あたりまでなので、その後のことも本書では解説してくれている。


全体としては、戦後すぐにはある程度普通の話をしていたのが(但し、警察官僚による「文統制」はあった。ただ治安問題の方が重要だった)、反軍主義の広がりでまともな議論ができない時代がああり(大江健三郎の有名な中傷発言、自治体による自衛官差別のエピソードなどを紹介)、70年代後半の第二次冷戦期になると日米協力が必須になり、冷戦終結後の湾岸戦争阪神震災とサリン事件、テポドンショック、911テロ、などと外部環境の変化が激しくそちらへの対応に忙殺されるという感じの流れ。

国外対策は現実問題として対応しないといけない。その一方で国内対策は建前重視で実質的な対応が後回しとなる、ということが何度も繰り返されていることが分かる。複数の方針間でズレが生じることも何度も起きている。その辺は、昨年の安保法案騒動も同じなんだなあという感想を持った。
一方で、昭和の頃は、メディアや自称文化人様から叩かれ、地方自治体から嫌がらせされ、警察系官僚やら大蔵省やら外務省やらから横やり入れられまくりだったのが、前進はしてきているのも分かる。


もちろん、今でもバランスをどうするかの課題は続いているのだが、昭和時代の不毛な議論への「逆コース」に向かっている人達は、まだまだ少なくない。


いわゆる「自主防衛論」の位置づけとかは、特に中曽根氏の位置づけとかは、「なるほどなあ」という感じだった。
80年代に課題になったシーレーンと航路帯のズレというのも説明と図を読んで納得。
自衛隊の違いというのも興味深い点。海自については『歩み』で読んだので陸自版と空自版が欲しいところ。