k-takahashi's blog

個人雑記用

ソニー復興の劇薬

ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘

ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘

タイトルを見たときに「ソニーもSAP導入するのに大変だったの? それに合わせて大改革したの?」と思ったのだが、ここでいうSAPはあのSAPではなく、「Seed Acceleration Program」というソニーの新規事業創出プログラム(いわゆる社内ベンチャー制)のこと。
そのSAPの生まれた経緯、起動から、育ての苦労、現状までをまとめている。


大企業がどうやってベンチャー的なスピード感を取り込むかというのはずっと課題の一つで、昨日発売になった日経コンピュータの「答えはGEにあり」にも、似たような話が出てくる。さすがにGEに取材するのは大変だろうが、多分ソニーのSAPと似たような苦労が多かったのではないかと思う。


といっても、そこはソニー。決して社内に動きがないわけではなかった。2012年に平井一夫氏が社長に就任した直後から、

どこにアイデアを持ち込んでいいかわからない、という問いと同時に、アイデアを平井自身に「直訴」する例が増えていたのだ。
(中略)
平井はできる限りそれに対応するつもりでいた。
しかし、その数は予想を超えて多すぎた。
(No.436)

という、いわゆる大企業病とは少し違う問題を抱えていた。そうした社内の「やる気」は、いわゆる「ソニーの伝説」に支えられたもので悪いことではない。が、当時とは状況が違う。
では、どうすればよいのか、という問題に対するソニーの回答がSAP。


断片的には耳にしていたソニー社内ベンチャー制度だけれど、それをきちんと整理してくれる一冊。
金額としては小さい話でしかないのだけれど、結局、全社人事制度とかに手を入れなくては機能しなくなってくるのも分かる。


ただ、本書の終盤はソニーの話に留まらず、「大企業とは?」という視点が中心になってくる。
イカーブームを越え、ハードウェアスタートアップが(問題の山の築きながらも)育ち、EMSが一般化している昨今、西田氏は「大企業のモノづくりとは」という視点に一章を割いている。
強みの一つは間接部門の手厚い支援であり、あるいは社内の経験豊富な人脈であったりする。それは現時点では大企業の強みであるし、ベンチャーが容易に持ち得ない武器ではあるが、でもそういったものも外部調達できるようになっていく中、いつまで「強み」と言っていられるかは分からない。

私の勤務先もいわゆる大企業なので、人ごとではないのだが、簡単にどうにかできれば苦労はないというのが現実ではある。


一つ面白かったのが、社内ベンチャーの仕組みの上に、社外との共同プロジェクトを載せてしまったという部分。これはうまいなと思った。私の勤務先に導入できるだろうか。