「見る技術」の解説であるのはもちろんなのだが、それ以上に「言語化する技術」でもある。解説される言葉は、「フォーカルポイント」(焦点。シェリングの用語としてしか知らなかったよ)、「リーディングライン」(重要な箇所に向けて目を誘導する線)、「集中と分散」、「結び目」(2つのフォーカルポントを連携させる場所)、「角の守護神」、「ストッパー」(両サイドの引力に対抗するもの)、「スライド・イン」(絵画の入り口)、「構造線」、「リニア・スキーム」(メインの構造線とそれを支える別角度の線の関係)、「フォーマル・バランス」(主役+両脇侍)、「バランサー」(フォーカルポイントが中央にないとき、釣り合わせるためのもの)、「マスター・パターン」(十字線と対角線をベースに画面を分割する方法。等分割、ラバットメント・パターン、黄金比などがある)、「共線性」(リーディングラインの結び目が並んでいること)、「ガムット」(主要な線の傾きを揃える)。
これらを全部、実例を用いて細かく説明している。なお上にあげた単語でも多分3分の1ぐらいで実際にはもっと色々な「言葉」を説明してくれている。
(色関係のところは知っていたから書かなかったけれど、ここも語彙が多い)
「名画」と呼ばれているものなら、ほとんどがこうした条件を「意図的に」「完成させて」いるから、そういうのを探して言語化する楽しみ方はいかがでしょうか、というのが本書の読み方なのだろう。
良い本だ。