k-takahashi's blog

個人雑記用

「科学的」は武器になる―世界を生き抜くための思考法―

 

 早野龍五先生の自叙伝というか、仕事論的な一冊。

「社会の中の科学者」という生き方について、つまり「科学的な考え方を軸に判断すること、仕事をすること」について、語ってみたいと思います。(No.84)

 一般には、原発事故のあとの情報発信で知られる早野先生が、研究者としてどのように仕事をしてきたか、文化発信者としてどのようなことをしてきたか、そして原発事故関係の情報発信をどのようにしてきたか、などを色々と語っている。そして、それらが一つの根っこに繋がっていることが納得できる。

 

マチュアの心で、プロの仕事をする (No.7)

僕はなんでも「楽しそうに」やりました(No.1128) 

まず、なんといってもこの2つが基本。そして、「プロの仕事をする」というところが「正しく測る」「確実に分かっていることを発信する」というところに繋がっている。

 

もう10才若かったら原発事故関係の発信はしなかっただろうという記述があり、それはキャリアの中でも似たような経験があってのことだったのだというのが分かる。
あと興味深かったのが、『まず測ってみるという実験家の僕でも「必要ない」と言える』『科学的には無意味でも、社会的には意味があるというものがある』とか、実体験に裏付けられた発言。

 

科学的な情報発信は、一部の活動家には非常に不都合なものだったので、(本書には書かれていないが)身の危険があったことが知られている。誹謗中傷についても相当酷いものがあったが、その辺については抑えめだがきちんと書いてある。

 

コロナ禍についても少しだけ書かれていて、少なくとも放射能の基本は分かっていた原発事故よりも更に難しい面があるという指摘があり、なるほどと。
あと、

グラフによる未来予測をしない(No.2589)

とも。

 

科学者のキャリアの部分だと、高温超伝導に早野先生の業績が関係しているというのは知らなかった。

まず測って、それを科学的に評価してというところは中西準子先生を連想しながら呼んでました。(で、上述の「科学的には意味が無いけど」というところが興味深いなあ、とも)