Numbers 恐怖の落とし穴
FOX-Japanで放映中のNumbersというTVドラマがあるのだが、それの第3シーズンの「恐怖の落とし穴」というエピソードを見ていたときのこと。(以下、本筋のネタバレはありません)。
主人公(が実は2人います。FBI特別捜査官のドン・エップスと数学者でFBIコンサルタントのチャーリー・エップスの兄弟)の一人、チャーリーの所属する学部に新学部長が就任する。押しが強く大学の規則を楯に取るタイプの人物で、この新学部長が大学に寝泊まりしていた物理学者の一人にこう説教する「どこに住むのも勝手だけれど、大学の蒸気ダクトの中はダメ」と。
その後で、「私も学生の頃は、Dungeons&Dragonsを遊ぶのに蒸気ダクトに入り込んだけれど」とか言っていた。 さすがアメリカだ。
ちなみに、このTVシリーズの制作総指揮は、あのリドリー・スコットです。
パンデミック
完全に時事ネタとなってしまったボードゲーム「パンデミック」。とりあえず内容確認を兼ねてソロプレイ(2プレイヤーモード)で挑戦。難易度は当然一番簡単な「導入」。
1回目
キャラは、MedicとOperationsExpert。
開始時点。はやくも中南米が危ない。
1回目のエピデミック発生時。まだ薬は一つもできていない。中南米はある程度押さえたが、中近東がピンチ。
2回目のエピデミック発生時。この直後にヨハネスブルグの研究所で最初(黄色)の薬が完成する。
3回目のエピデミック発生時。病人の治療を進め(Medicがいるので)ている。ここまでアウトブレイクは起きていないが、薬の開発が遅い。
薬はあるが治療対応が間に合わず、南米が危ない状況に。
4回目のエピデミック発生時。薬は3種類まで完成している。
このあと、カード切れ(時間切れ)で人類は滅亡しました。
2回目
キャラは、DispatcherとScientest。
1回目のプレイの反省から、アウトブレイク覚悟で薬の開発を優先に進めたのだが、
アウトブレイクが続き、南米・アフリカで疫病が大流行。病原体コマの上限(24個)を突破してしまい、人類滅亡。
3回目
悔しいので勝ちを狙いに行く。キャラはランダム選択ではなく、ScientestとResearcherを選択。
カードの引きが良かった(1回目のエピデミックがかなり遅いタイミングになったのと、Researcherに必要なカードが多く集まった。)ので、カードをResearcherからScientestに渡しつつ順調に薬を開発し、
なんとか勝てました。
感想
1プレイは1時間かからないでしょう。実際、2回目、3回目のプレイは30分くらいでした。
カードの引きが悪いとどうにもなりませんが、短時間で再プレイが可能なので、バランスは取れていると思います。
流行をコントロールするシステムが、デッキコントロールの手法を巧妙に取り入れたもので感心しました。
流行は「感染カード」というデッキによって制御されます。このデッキを各プレイヤーの手順の感染カード処理手順の時に上からめくっていき、対応する都市で患者が増加します。
プレイヤーデッキの方で「エピデミック」カードが出ると、感染カードデッキの底から1枚カードを引きエピデミックを発生させ、その後で使用済みカードをシャフルして感染カードデッキの上に置きます。つまり、「過去に感染履歴のある都市」が引かれる可能性が高くなっているのです。
この「エピデミック」カードの枚数で難易度がコントロールされており、「導入用」という難易度の場合4枚です。これもまず、プレイヤーデッキを4分割した上で、それぞれに1枚ずつエピデミックカードを入れ、シャフルした後に積み重ねるという手順になっています。これである程度のばらつきとランダム性を両立させています。
いやはや、上手いデザインだと感心。
追記
ロール&ロールの48号にリプレイ記事が載っていました。(2009/05/03 追記)
What can board games teach us?
「パンデミック」のデザイナー Matt Leacock がGoogle社で開催されたセミナーで行った講演。約50分のビデオです。全部聞き取れたわけではないのですが、幾つか話題をメモしておきます。
- 最初のプロトタイプの時点で基本的な要素は全部入っていた。
この写真が元の地図で、周囲に細かく書かれているのがルールだそうです。
- 作成には4年。地図だけでも10数回書き直している。
- 病原体コマの4色には最初は赤と緑が含まれていた。ところが、プレイテスト中に赤緑色盲についての指摘を受け、色を変えたとのこと。さらに、色無しでも分かるようにシンボルを書き加えた。
- "You can't have a great game, if people can't play it" (14:07辺り)
- "As simple as possible, but no simpler" (17:50 辺り)
- 当初は1つのデッキでデザインしていたが、分かりやすさのために2デッキにした。縦向きと横向きでプレイヤー側とシステム側を区別。カードの種類を増やすとコストが上がるが。
- コスターの理論 "Fun = Learning"を紹介
- チクセントミハイとサレン&ジマーマンのフロー理論を紹介*1
- 難易度調整機能を最初から組み込んだ
- ファンが地図を自作することは、最初から想定していた
- ゲームデザインとソフト開発について
- iterationが大事
- Fun、Flow という視点
- プレイヤー(ユーザ)の振る舞いを watch せよ
- Co-operative game と Co-operation は似ている
- Long-tail にある良質なゲームをメジャーにする(きちんと宣伝して、誰でも手の届くところに置く)には、という問題の解決方法は分からない
- 協力ゲームにおける「独裁者」問題は、解決できていない
- "Outbreak"というタイトルは、開発中のタイトルだった(現物を見せてくれています。34:10 辺り)
*1:"Rules of Play"の翻訳はどうなっているんだ?