- 作者: 河合香織
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/10/30
- メディア: 文庫
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障碍者の社会参加の問題と、性・恋愛問題とを同時に扱っているのだけれど、ここ2,3年で大きく変わってきたのが後者の問題の扱い方。例の酒井順子「負け犬」騒動と、そこから派生したモテ・非モテ論、あるいはニート論の一部は今でも続いていて、後者の問題で困っているのは狭義の障碍者に限らないということがはっきりしてきた。まだ解決には程遠いものの、とりあえず、問題がありそうだなという意識は高まっているので、前進はしているのだろう。
そういう観点から見ると、本書のいくつかの部分は、障碍者問題という枠で捉えるのが不適切になっているように思う。身体的障碍により社会生活(恋人作りや結婚も含む)をうまく進められないのも、心理的障碍により進められないのも、対応が必要という点では同じで、しかも、軽度の人(ここがボリューム的には圧倒的に多いはず)を対象にするなら、対応はほとんど変わらないような気がするのだ。自分を見つめ直し、否定的な考えを減らし、自分のできることをする、という点に健常・障碍の差はほとんどない。
逆に言えば、本書を、障碍者について語った本と捉えるだけではなく、社会生活上の問題を語った本ととらえ直すこともできる。むしろ、こっちの方が大きいのかも知れない。
もちろん、障碍者特有の問題はあるし、それはそれで大事。究極的にはテクノロジーが解決する*1としても、すぐに全てが解決するわけではない。でも、分けられる部分は分けた方が解決が早いと思う。