先月半ば頃に「水素水で認知機能低下が抑制される」という記事が発表されたが、「○○水」と言えばエセ健康商品の代名詞であるため、当然多くの疑義が提示された。一方で、掲載誌自体はまともなもので、「本当のところ、論文は何を主張しているんだ?」という問いも多く出された。
それについて、SF作家の瀬名秀明先生がまとめエントリーを作成、公表された。
水素分子の抗酸化ストレス効果に関する研究について、基本を理解し、考えるためのリンク集をつくってみました。瀬名の個人見解も併せて記載しました。
http://news.senahideaki.com/article/103365233.html
どこかでこの話聞いたことがあったな、と思って思い出せなかったのですが、瀬名先生の本でした。調べたら自分の日記に書いてあるじゃん。
蘊蓄も色々と楽しい。ミトコンドリアの色(一般のイメージは緑だが、研究者のイメージは赤だそうだ。ヘモグロビンの影響で血液が赤いのと理由は同じだとのこと)の話や、水素ガスによる活性酸素の害の抑制(インチキ商品の話とは別)、日本人のミトコンドリアDNAをグループ分けしたハプログループ(7種類に分かれるらしい。ミトコンドリアのDNAの違いは、エネルギー制御に直結するので、血液型なんぞよりもよっぽど影響は大きそうだ。もっとも、「性格」をきちんと定義しないかぎり、迷信に堕することになるが)などなど。
ミトコンドリアのちから - k-takahashi’s 雑記
瀬名先生の記事を信じる限りでは、研究内容、論文ともにまともなものに見えますので、あとは普通に科学手続きに載って確認していけばいいのでしょう。
ただ、
太田教授の研究内容について、しばしばConflict of interest(利益相反)について疑問が出るのは、彼らがこの会社の顧問をしているからでしょう。
http://news.senahideaki.com/article/103365233.html
「水素水」という名前は確かに「活性水素水」と間違えやすいものです。紛らわしい名前を使わないでほしいという批判もあるでしょう。すばやくウェブで情報を公開するべきだという批判もあるでしょう。
http://news.senahideaki.com/article/103365233.html
ブルー・マーキュリーを起ち上げた室田渉氏について、丸山甲斐『水素の世紀』(幻冬舎ルネッサンス)という本が詳しく記しています。この本を読むと、室田氏はもともとルルドの「奇跡の水」や九州大学・白畑教授の怪しげな「活性水素」理論に関心を持っていたようで、その興味が飽和水素水をつくる機械の開発への着手に弾みをかけたと思えてきます。室田氏は「H4O」(エイチ・フォー・オー)というベンチャー企業からスタートしたようですが、H4Oというのは首を傾げたくなる化学式ですから、これは混乱を助長します。
http://news.senahideaki.com/article/103365233.html
そこまで自覚していて、
一連の水素分子研究に関して、太田教授ら日本医科大学はインターネット上に簡潔明瞭なプレスリリースを出してきませんでした。そのためウェブから情報を検索し判断したい人たちの期待に応じることができず、結果的にこのような混乱を招いたのだと思います。
http://news.senahideaki.com/article/103365233.html
では、やはりまずいと思います。とくに、既存メディアが専門領域を扱うときのいい加減さに対するウェブ側の不信感は非常に根強いものがるのですし。
でも、今回のエントリーは役立ちますし、どこが怪しげでどこが研究なのかも分かりました。(残念ながら、研究の中身自体の評価は素人には分かりませんが) 本来ならばこれを太田教授が出すべきでした。
厳密には瀬名先生も利害関係者(水素水の効果について触れた本の共著者である)ですが、このエントリーならスタート地点として使えると思います。エントリーを作成してくれた瀬名先生に感謝。