パソコンは日本語をどう変えたか―日本語処理の技術史 (ブルーバックス)
- 作者: YOMIURI PC 編集部
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/08/21
- メディア: 新書
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1972年の日本初の新聞紙面作成システム「日経ANNECS」から説き起こし、オフコン、ワープロ専用機、パソコンと続けていく。日本語を扱うには、「入力」「処理」「出力(印字)」の3要素が必要であり、それぞれ解説されている。漢字出力については、1979年の富士通のコンピュータでは「日本語ラインプリンタ:2000万円」というとんでもない数字が記されている。で、PC/ATによる活用辺りまでが順次解説されていく。
最初の漢字コードであるJIS X 0208(いわゆる旧JIS)の制定が1978年なのは偶然ではなく、上記の富士通の1979年と符合しているわけですね。
そのあとがケータイの話。(POBOXを「書かされる」と捉える人もいるのか、というのは興味深い。)
本書では、フォントや字体の問題にある程度紙幅を割いている。漢字コードとフォントの関係の説明は結構面倒だったりするので、この部分はありがたい。(鴎外とか葛飾区とかの話の何がどう問題なのか説明するのは意外とややこしい)。
終盤は、戦後の一時期真剣に検討された「漢字廃止論」に終止符を打ったのがコンピュータによる漢字利用の実用化だった、というあたりから始まり、常用漢字の制定経緯から、「正しい漢字とは何か」という話題に進めている。
タイトルの「日本語を変えたか」というところについては、「ケータイの絵文字」は新しい文字と言えるのではないかとか、パソコン(IME)やケータイのハード的制約(画面サイズ)による書き言葉の変化とかが少しだけ触れられている。
それほど凄い本だとは思わないけれど、個人的にはフォント回りの話を整理して貰えたのが収穫だった。一方で、現在パソコンで日本語を使う場合の最大(最悪)の問題であるMS-IMEのことに触れていないのはダメだと思う。(まあ、立場的にそんなもの書けないのは分かるけれど。)