k-takahashi's blog

個人雑記用

物語工学論

物語工学論

物語工学論

物語とは、キャラクターである。少なくともキャラクターという観点から物語の構造と本質をよりよく見通し、その作成に役立てることは十分に可能である (p.6)

という視点から、キャラクターの種類を7種類設定し、それぞれに簡単な解説を加えた一冊。題名に反して、全然「工学」していません。新城氏のエッセイです。大元帥の著書には「右往左往シート」という分析法が紹介されていましたが、本書には7類型のそれぞれにチャートと称するシートと表らしきものがついているだけ。しかも、これ、ほとんど意味ないです。


 さて、その7種類とは、

 キャラクターとしては、「片寄った」「欠落した」部分をもつ。「さまよう」の部分はクエスト型、ジャーニー型の2つに分けられ、それぞれその極端な事例としてミッション型、エクソダス型を持つ。

  • 塔の中の姫君

 塔は物理的なものとは限らない。跛行者の対になる。
 「わかりやすいドラマ」の基本構造は、「自由、平等、博愛」の逆である「束縛、服従、偏愛」である。

  • 二つの顔を持つ男

 両立しがたい。どちらが本当か、という問題。
 「ツンデレ」もこの一つ。
 文明社会に向いている。というか、非文明社会的背景ではあまり意味がない

 「二つの顔を持つ男」の非対称性が「正義/法」となるのに対し、武装戦闘美女の非対称性は「性別による分業」からくる落差から発生している。
 兼ね備えた完全な人間(対称性の回復)の意もある。しかし、それがどのように受容されるかは観客の好みに依る。

  • 時空を超える恋人たち

 自分と合一することで完全となる、相補的なものへの希求。

  • 危ない賢者

 跛行者との違いは、「失敗すること」。

  • 造物主を滅ぼすもの

 フランケンシュタイン


 巻末には対談もついていますが、中身は普通。「工学」が分かっている人間が新城氏にインタビューして、本を書けばもうちょっとタイトルに近い内容にできたかもしれない。
 物語の類型とかを考えるなら、カイエ・ソバージュを直接読んだ方がいいと思う。