- 作者: 円城塔
- 発売日: 2016/11/13
- メディア: Kindle版
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主人公は「あなた」と二人称で呼びかけられる人物。読者は「ジョン」という名前と傭兵の役割を与えられ、「U」という名の迷宮=ダンジョンで死闘を繰り広げるRPGの主役として振る舞うよう迫られる。「現実世界よりも大きな広がりを持つ」Uにおける冒険はどこへ向かうのか?
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ラスボスたる「魔王」とは何者なのか?
という設定でスタートする、広い意味での「ゲーム小説」。メタ視点からちょっと斜に構えた感じで世界の描写が続いていく。ここまでだったらよくある話だが、円城塔がそれだけで済むはずがない。
ゲームブックは、直線的な物語の形式を離れ、読者が物語の展開に参加できるように、複数の筋立てを用意したところに妙味があったが、紙の本から、ゲーム機、PC、スマートフォンへと端末が進化を遂げ、「ゲーム」と「ブック」が乖離していく中、運命の変転を余儀なくされていく。
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一旦は分岐型となったゲームブック形式だが、読みやすさという点では全てをきちんと書いた方が良くなる。そう、パソコンのノベルゲームが辿った道である。
だが、外部から見れば非直線的な多様性を持ち、読者にとっては直線的な読みやすさを持つことはできないのだろうか? となり、読者の反応によって物語を変えることが提案される。デバイスと合わさっていれば読者の反応を知ることができる。退屈しているようなら刺激を増やし、好みの部分を増やし、受けの悪い部分を減らすということは、不可能ではない。
というような話。紙の本なら20ページくらいの短編だが、Kindleで個別販売(99円)されているので、気になる方はどうぞ。
まあ、アンソロジーかなにかに収録されるだろうとは思う。
でも、私がよんだ『世界でもっとも深い迷宮』は他の人が読んだのと同じなのだろうか?
比喩的な意味で「本は読む人によって中身が変わる」とは言うけれど、それが文字通り実現するかもしれない現在なので、やはり電子書籍で読むのがお薦め。