- 作者: アレステアレナルズ,Alastair Reynolds,中原尚哉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 文庫
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身近警護の専門家タナー・ミラベルは、雇い主一家を惨殺した黒幕レイビッチを追って、故郷から遠く離れたイエローストーン星に到達した。だがそこで目にしたのは異形の都市カズムシティだった。謎のウイルスによる“融合疫”の発生により、建築物はあたかも新種の植物のように成長し、複雑に融合しあって奇怪なジャングルと化していたのだ…異形の街を舞台に展開するノンストップ・ハードボイルド・アクション超大作!英国SF協会賞受賞作。(紹介より)
主人公のタナー・ミラベルがイエローストーン星への移動に用いたのは、いわゆる冷凍睡眠による恒星間移動。その副作用で、若干記憶の混乱が起こる。しかも、この主人公は、出身星のスカイエッジ星で「オスマン・ウィルス」というやっかいなウィルスに感染している。このウィルスは、スカイエッジ星の歴史上の大悪人であるスカイ・オスマンの歴史を再体験させるという厄介な作用を持っている。本来ならば、記憶を取り戻し、ウィルスを除去するために充分静養するべきだが、のんびりしていてはターゲットであるレイビッチに逃げられてしまう。 そのため、タナーは、記憶の混乱を抱えたまま追跡にとりかかることになる。
物語は、イエローストーン星の都市「カズムシティ」の異様な世界の描写と、混乱混じりで語られるタナーの記憶(スカイエッジでの記憶と、オスマンの物語)が交互に絡まり合いながら進んでいく。
そして、予想通り、スカイエッジでの話とオスマンのストーリーとカズムシティでの追跡劇がいつしか、異様な混じり具合となっていく。と書くと結構複雑な話に思えるがリーダビリティは高い。混乱は、楽しめる範囲にきちんとコントロールされています。前作の「啓示空間」よりも読みやすいのは事実だと思います。
カズムシティの描写も、市民の描写もビジュアル的にエッジの立った面白いものです。暴走するナノテクが生み出す、変形した都市。遺伝子操作された人間。頽廃の生み出す人間狩りゲーム、などなど。
異境での娯楽SFということでなら、(厚ささえ気にならなければ)、お薦めです。