k-takahashi's blog

個人雑記用

SFマガジン 2009年12月号

S-Fマガジン 2009年 12月号 [雑誌]

S-Fマガジン 2009年 12月号 [雑誌]

恒例のファンタジー特集号。短編が4本と早川文庫FTのガイド。

「図書館と七人の司書」(エレン・クレイギス)は、古い図書館で起こったお話。住み込みで勤めている七人の司書以外だれもこなくなって久しい図書館が舞台。そこに延滞図書と一緒に一人の赤ん坊が置かれていた。司書達はこの赤ん坊を図書館の中で育てていく。図書館の中で育つ少女の描写が印象的な作品。

早川FTは今年で30年だそうです。当時は、ヒロイックファンタジー、児童文学、ゴシック、怪奇小説とバラバラな状態だった。そこに「ファンタジー」という分野を統合するのに貢献したのが指輪とゲドという70年代の作品。そして、それを受けて1979年にスタートしたのが早川FTだった、と。 面白いのが表紙絵の話。当初のメインターゲットが「10代の女性」だったこともあり、そういった女性に人気の漫画家を起用した。これ自体は好評だったが、実際には男女比はほぼ五分だったそうで。 で、80年代になると、エンデ人気やゲーム文化によって広まっていったそうです。


 神林長平トークの再掲記事も面白かった。やっぱりちょっと変わった作家なんだなあ。辻村深月の以下の発言に笑った。

神林作品の洗礼を受けたからこそできることだと思うんです。そして、それと引き替えに、たぶん、トレンディドラマを見て涙する能力を失ったんじゃないか。どっちの能力が欲しいかということだと思いますが、私は神林長平の先例を受けたことに後悔はないです。(p.7)


 大野典宏氏のコラムで面白かったのが次の部分。

テレビが家庭の中心だった時代にはネット機能はテレビに組み込まれるという変な予想までされていたが、Webブラウザを搭載したテレビはあまり売れなかったようだし、主流にはならなかった。実際には逆で、各個人のニーズに応じてネット端末にテレビやラジオが取り込まれ、好き勝手に好きな媒体に接しているという状態になった。(p.199)