k-takahashi's blog

個人雑記用

蝉丸Pのつれづれ仏教講座

蝉丸Pのつれづれ仏教講座

蝉丸Pのつれづれ仏教講座

某仏教寺院25代住職であり、阿闍梨大僧都である。
即ち「リアル住職」を意味をする「リア住」、「僧職系男子」と呼ばれる「プロ僧侶」である。
自身の「業務用仏具」で演奏、動画製作をする主に「演奏してみた」カテゴリーで活躍する動画投稿者である。

蝉丸Pとは (セミマルピーとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

リア住による仏教講座。なにやらいい加減な企画のようだが、

宗教や古典や哲学というものは、困ったときに選択の余地がないまま無造作に受け入れてしまいますと、本来薬であるものが、いとも簡単に猛毒になったりいたします。
ですから、なるべくであれば、余裕のあるときに嗜みや教養程度には知識やそれぞれの宗教や思想ごとの考え方といったものを自分の中に蓄えておきませんと、いざというときに掴んだモノがワラなのか、丸太なのかも分からないまま、とんでもないところに流れ着いてしまう可能性もございます。(p.14)

ということで、かなり真面目な意図で書かれている。
ニセ科学やニセ医療にひっかからないためにプロレベルの知識は必要なく、高校生レベルの理科の知識があれば充分なように、ある程度の知識があれば宗教もインチキイカサマにひっかかることもないだろうということ。これはオウムの教訓でもある。


上記の紹介のようにニコ動で有名な方であるため、文中に出てくるネタがまたオタク好みのものが多い。そのため、その筋に人には非常に取っつきやすいものになっている。(田舎で高齢者を相手にするときには、かくかくといった感じの話にするんですよ、という記述もあり、人を見て説いているというのが分かる。)

但し、取っつきやすくは書かれているが分かりやすいかというとちょっと違うような気もする。ただ、私は本書を読んで、もうちょっと仏教の本を読んでみるかなと思ったので、少なくとも私には効果的な一冊だったということになるだろう。
(部分部分は知っている内容が少なくなかったが、きちんと整理したものを読んだことはなかったと思う。)

軍事ネタ

仏教書(だよねえ、一応)にもかかわらず、参考文献にクレフェルト*1江畑謙介*2があるんですけど……


あとは、

一族郎党T-72神教とかんら、それはそれでオブイェークト!と唱えに行きたいんですが。(P.177)

とか

TRPG

こちらの方に熱が入りまして、『トンネルズ&トロールズ』『ルーンクエスト』『ストームブリンガー』『クトゥルフの呼び声』など休み毎に皆で集まって、キャラクター作成をしたりマスタ-やったりしてますとキャラの種族・民族・職業やギルド所属の有無、善・中立・悪などの行動理念と当時の電子ゲームよりも細かい設定をしなければならず、ここで具体的に職業の選択に僧侶があるんだと開眼いたしました。(p.100)

と、TRPGに人生を教わった蝉丸P。更には

学校や社会の中でもキャラクターを作成して職業を割り振り、それを演じるのは自分自身であるけれど、作成されたキャラクターは自分の一部であっても、そのものではないという具合に、スパッと割り切りが出来たので、思春期にありがちな自分探しのような出口のない迷路や、存在意義の確立に苦悩することもなく、世間で認識されている姿=全人格で否定されたり挫折があろうものなら、ポキッといってしまうリスクを回避しておりました。
ノークッションで心に直接ダメージを受けがちな同世代の子に比べますと、キャラはキャラ、自分は自分という心の棚がありましたから、より冷静に、キャラクターにどういった特技を習得させて、どの職業になって収入を得て現実社会で生きていくか、という適正や向き不向きをあれこれと考えており、気付いたら普通の高校一年生から僧侶見習いにクラスチェンジした次第でございます。(pp.100-101)

ロールというものの一つの捉え方ではあるな、と。


また、律についても

お釈迦さん的には「知らんがな、悟りを求めて行動するなら言わずもがなやろ」という頭の痛い話であったと思われますが、TRPGにおいても「いや、ルールブックに書いてないから」とゲームマスターの想像の斜め上を行こうとするプレイヤーが後を絶たないのと同じようなものです。(p.332)

だそうです。

チベット

チベット仏教についても簡単な説明あります。幾つか抜き書き。

しかし中国のチベット侵攻は論外だとしても、チベット側も侵攻を招く、あるいは防げなかった事情に、民族間の勢力争いが背景にあります。(p.224)

現・ダライラマ14世は宗派を越えた「超宗派」を唱えて活動しておりますが、これは有力氏族の紐付きである政治体制の改革であり、ゲルク派の保守層などは、これを良しとせず隙あらば足を引っ張ろうと躍起になっているそうで、、ダライ・ラマ14世亡き後はどうなるのか予想が付かないとされております。(pp.224-225)

後代に教えを残していく僧侶をどうやって育てていくかというと、最大派閥のゲルク派では、学窓である博士(ゲシェー)と呼ばれる僧侶を要請するカリキュラムがあり、「根本説一切有部」など部派仏教の教学と律を学んだ上で、「因明」と呼ばれる仏教論理学を学んでディベート術を磨き、そして大乗の諸説や瞑想を学ぶという、非常に優秀な一握りのものが、最終的に密教を学ぶというシステムを保持してきたので、現在でも生きた貴重な体型を有しております。
しかし、この先もこういった伝統が保持できるかどうかは、政治状況次第という、危うい状態が続いていることが懸念されています。
けれども、チベット人達がチベット仏教を核としたチベット文化並びにチベット語を保持する限り、その独自性を保って、あるいは念願の独立(自治)を勝ち取ることもできようとも思われます。
この文化や伝統が保持されるかどうかは、ひとえにチベット仏教界の双肩にかかっているといえるかもしれません。(pp.227-228)

中共がやろうとしていることが何なのか、ということが分かる。

*1:

補給戦―何が勝敗を決定するのか (中公文庫BIBLIO)

補給戦―何が勝敗を決定するのか (中公文庫BIBLIO)

*2:

軍事とロジスティクス

軍事とロジスティクス